人生最大のピンチのときに「人生最高の出会い」をしやすい理由

うつ、不安・緊張、対人関係の問題、依存症――近年、これらの悩みを抱える人はますます増えている。実は、それぞれに共通する原因になり得るものとして、親との関係によって築かれる「愛着」がある。ここでは、「愛着アプローチ」という手法を用いて、現代人の悩みの解決に寄与したい。※本連載は、精神科医・作家である岡田尊司氏の『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』(光文社新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

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今の自分を受け入れるため「過去のこだわり」を捨てる

愛着障害を抱えている人の根本には、「ありのままの自分を受け入れることができない」という課題がある。そしてそれを乗り越える訓練として、マインドフルネスや瞑想をすることも助けになるのであるが、やはりここでも大きいのは、「親が今の自分を受け入れてくれているかどうか」なのである。

 

愛着修復的アプローチにおいて、親の見方を変える働きかけに力を注ぐのは、そのためであり、実際、親がかかわり方を変えることで、投げやりだった気持ちが、前向きに変化することは多いのである(前回記事『「こっちの迷惑も考えろ」と…こじれた関係を修復する方法は?』参照)。

 

ことに親が、かつてその人にかけた期待にこだわり、その人の現状を否定的に見ている場合には、現状を親が肯定的に受け入れることができるようになるだけで、その人自身も今の自分を受け入れられるようになる。そうなって初めて、「もう頑張っても仕方がない」と思っていたのが、「自分なりに少しずつやってみようか」と思えるようになるのだ。

 

しかし、親がなかなか変われない場合も、やはりある。親が変わろうとしようがしまいが、最後にはその人自身が、「かつてのプライドやこだわり」を捨てることができるかどうかである。この和葉さんのように、一流の大学を出て、優秀だった人でなくても、それなりに能力があり、プライドもある人の場合には、自分の現状を期待外れと感じてしまうと、なかなか受け入れることができない。「自分が期待するレベルのことができないのであれば、もう何もしたくない」と思ってしまい、投げやりになることも多い。

 

そこでやはり効いてくるのが、「どん底を味わった体験」なのである。軌道を大きく外れ、「もはや自分の人生はこれまでか」と思うような絶望的な状況を、身をもって味わうことによって、それまでとらわれていたプライドや価値観を捨てることができるのである。

 

だからこそ、ピンチはチャンスなのである。そこそこうまくいっているときには、人間は変われないし、大きな成長もない。行き詰まったときこそ、変われるチャンスなのである。

弱ったときこそ、必要な出会いや深い絆が生まれやすい

また、ピンチがチャンスになりやすい理由の一つは、そういうときこそ、その人に必要な出会いや深い絆が生まれやすいということである。

 

弱っているとき、安心感の拠り所を求めようとする愛着システムが活性化しやすい。元気なときなら人に頼らないような人でも、弱っているとき、どん底のときには、人を身近に感じていたいと思う。心のうちまで打ち明けられるかどうかはともかく、メールをしたり、電話をかけたり、安心できる人に会いたいと思う。普段は人に相談などしない人でも、誰かに話を聞いてほしいとか、意見を聞きたいと思う。

 

そうなる理由は、不安が高まった状況に対して「愛着システム」のスイッチが入り、愛着行動が増加することによる。そして愛着行動は、出会いを引き寄せたり、人との関係を親密にしたり、その人が今必要とする助けをもたらす。

 

愛着は、個人を超えて備わった相互扶助システムでもある。だから、誰かが助けを求めようとしておこなう愛着行動に対して、回避型の人は別として、周りの人は「求めに応えようとするスイッチ」が入るようにできている。

 

それゆえ、相手をよほど間違わない限り、愛着行動は相手の応答行動を引き出し、それによって、助けを求める人と助ける人の関係が生まれる。

 

しかも面白いことに、助ける行動をおこなうと、人は自分が助けた相手に愛着を覚え、特別な関係が育ち始める。母親は、お祖母ちゃん子よりも、自分が世話をした子どもの方が可愛く感じることが多いが、同様に多くの人は、助けを求めてきた人の面倒を見ているうちに、その人に対して他人以上の気持ちをもつようになりやすいのだ。

 

さらに、そういう出会いにおいては、自分のいちばんの弱みやダメな部分もさらけ出しているので、余計に深い信頼が生まれやすい。実際、人生最大のピンチにおいて、人生の最高の出会いに恵まれるということは、しばしば起きることなのである。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

精神科医、作家

1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで困難な課題を抱えた若者に向かい合う。現在、岡田クリニック院長(枚方市)。大阪心理教育センター顧問。

著書に『愛着障害』『回避性愛着障害』『死に至る病』(以上、光文社新書)、『ストレスと適応障害』『発達障害と呼ばないで』(以上、幻冬舎新書)、『パーソナリティ障害』(PHP新書)、『母という病』(ポプラ社)、『夫婦という病』(河出書房新社)、『マインド・コントロール』(文藝春秋)など多数。

小笠原慧のペンネームで小説家としても活動し、『DZ』『風の音が聞こえませんか』(以上、角川文庫)、『あなたの人生、逆転させます』(新潮社)などの作品がある。

著者紹介

連載親子、友人…対人関係が上手くいかない人へ!「愛着障害」を克服する方法

愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる

愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる

岡田 尊司

光文社

幼いころに親との間で安定した愛着を築けないことで起こる愛着障害は、子どものときだけでなく大人になった後も、心身の不調や対人関係の困難、生きづらさとなってその人を苦しめ続ける。 本書では、愛着研究の第一人者であ…

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