臨床論文を書くにはまず「情報のインプット」を増やすことが大切だ。医学誌・科学誌といった専門的なものに限らず、国内外の新聞や週刊誌などの一般的なメディアも貴重な情報源になりうる。しかし実際は多忙で、これらをじっくりと読む時間はほとんどないだろう。情報収集には工夫が必要だ。ここでは、現役内科医の上昌広氏が、一般メディアから効率的に情報収集する方法を解説する。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

高齢者向けと侮るなかれ…「週刊誌」も貴重な情報源

このような国内外の新聞以外に、若者には週刊誌に目を通すこともすすめている。私は、『週刊現代』、『週刊ポスト』、『週刊文春』、『週刊新潮』、『週刊朝日』、『サンデー毎日』、『ニューズウィーク日本版』、『AERA』、『フライデー』、『女性自身』、『女性セブン』、『週刊女性』などに目を通している。NTTドコモが提供する『dマガジン』を購読すれば月額450円で読み放題だ。

 

私が週刊誌に目を通すことをすすめるのは、このような媒体が高齢者の関心を反映しているからだ。週刊誌の読者の多くは高齢者だ。いまや週刊誌は高齢者しか読んでいないと言っても過言ではない。だからこそ貴重なのだ。患者の多くは高齢者だ。高齢者が何に関心があるかは、このような雑誌を読むことで理解できるからだ。週刊誌の主要テーマは、健康・医療、財テク・年金、性(これは男性週刊誌のみ)だ。これこそ、患者の関心なのだが、医療現場では健康・医療以外はあまり議論されない。これでは全人的医療はおぼつかない。

 

また、このような雑誌は昭和特集など、彼らの若かりしころの社会状況を頻回に紹介している。読者を意識した特集なのだが、彼らの人格を形成した時代背景が理解できる。これは若手医師にとって重要だ。

 

これ以外に総合情報誌(『選択』、『FACTA』、『クーリエ・ジャポン』)、科学誌(『日経サイエンス』)などに目を通している。また、『ハフィントンポスト』『フォーサイト』、『ビジネスジャーナル』なども購読している。

「見出しだけチェック」でも、情報収集に絶大な効果

新聞からウェブメディアまで、ほとんどは見出しをみるだけで、チェックに要する時間は5~10分程度だ。ただ、それでも効果は絶大だ。見出しを見るだけでも、世の中の流れがわかるからだ。

 

記事のなかには、全文を読むものもある。それは『選択』『FACTA』だ。マスコミが書かないテーマを独自の視点で分析しているからだ。このような雑誌を読むと、日本の新聞報道がいかに一面的であるか実感する。多くの重要な問題が報じられていない。

 

では、なぜ、新聞や雑誌を読むことが、臨床研究に重要なのだろうか。それは新たな視点を提供してくれるからだ。私は、これまで多くの若い医師や看護師を指導してきた。そこで実感するのが、大学院生までの人と、それ以降に伸びる人の差だ。大学院までの人とは、真面目で能力が高く、指示されたことについて、きっちりと成果を出す。中には、大学院時代に『ネイチャー』や『ランセット』のような一流誌に論文を発表する人もいる。

 

ところが、このような若きスターの多くは、その後、伸び悩む。それは、自分で課題を見つけることができないからだ。大学院時代に成功したテーマに固執し、時代遅れの研究者となってしまう。この壁を越えるには、新たな能力を身に付けなければならない。

 

大学院生と指導者では、求められる能力が異なる。この状況は、プロ野球の選手とコーチ・監督の状況に似ている。指導者に求められるのは、プロ野球も医療界も変わらない。それは、幅広い教養と指導力だ。前者を身に付けるには、まずは幅広い情報のインプットだ。情報がなければ、思考力などつきようがない。そのためにどうすればいいか。筆者の試行錯誤を紹介させていただいた。参考になれば幸いである。

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所理事長

 

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