日本では、2000年以降、タワーマンションが乱立する状態になっている。空き家が急増する中、これ以上、大量に住宅を供給する必要はあるのか?またマンションには欠かせない大規模修繕も、タワマンは多額の費用がかかり、破綻の兆しを見せている。いま、タワマンは「限界」にきていると、住宅ジャーナリストは指摘する。本連載は榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)より一部を抜粋、編集した原稿です。

「交通の便がよい」「駅から近い」のはずが

タワマン銀座・武蔵小杉の悲惨な状況

 

「30分早く自宅を出る方が多いようですよ」

 

私にそう話してくれたのは、神奈川県川崎市の武蔵小杉エリアで活動する市民グループ「小杉・丸子まちづくりの会」(以下、まちづくりの会)に参加している方々だった。

 

「30分ですか……」

 

私はそれを聞いて唖然とした。

 

タワーマンションの街・武蔵小杉駅の混雑は緩和されたのか。(※写真はイメージです/PIXTA)
タワーマンションの街・武蔵小杉駅の混雑は緩和されたのか。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

まちづくりの会では、2017年の6月から8月に武蔵小杉駅周辺の住民に対してアンケート調査を行っていた。その中の「武蔵小杉を住居に選んだ理由」という問いに対する回答の中で1番多かったのが、「交通の便がよい」、2番目は「駅から近い」、3番目は「通勤に便利」となっている。交通の便がよくて駅に近く、通勤に便利な住居を選んだのに、通常の30分も早く自宅を出なければいけないとは、本末転倒ではないか。

 

JR横須賀線の武蔵小杉駅が開業したのは2010年。東京へも、横浜方面へもアクセスが1気に便利になった。しかし、武蔵小杉から電車に乗って30分あれば軽々と大船あたりまで行けてしまう。朝、30分自宅を早く出るのなら、時間的には大船に住んでいるのと同じことになる。

 

混雑度は緩和されているか?

 

「改札の前に長蛇の列、30分待ち」

 

2017年の11月、JR横須賀線・武蔵小杉駅における朝のラッシュ時の混雑ぶりが複数のメディアで報道された。ホームにたどり着くまで30分、というのはいかにも異様だ。しかも、一般には交通利便性が高いと考えられるタワーマンションの街・武蔵小杉においてだ。

 

それ以来、さまざまなメディアが取材に押し掛けたという。

 

私がまちづくりの会を取材するために、武蔵小杉を訪ねたのは2018年の7月中旬。横須賀線の改札で駅員さんに「最近の混雑ぶりはいかがですか」と尋ねると、警戒感も露に「いえ、最近はそれほど混雑していませんよ」という答えが返ってきた。

 

まちづくりの会によれば、一時期よりも混雑度が緩和されたそうだ。確かに、2018年4月には通勤ラッシュの時間帯限定で改札口も増設された。また、2019年3月にはダイヤ改正も行われた。着実に混雑緩和に向けて進んでいるようだが、まだまだ根本的な解決には至っていないという。

 

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限界のタワーマンション

限界のタワーマンション

榊 淳司

集英社新書

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