日本では、2000年以降、タワーマンションが乱立する状態になっている。空き家が急増する中、これ以上、大量に住宅を供給する必要はあるのか?またマンションには欠かせない大規模修繕も、タワマンは多額の費用がかかり、破綻の兆しを見せている。いま、タワマンは「限界」にきていると、住宅ジャーナリストは指摘する。本連載は榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)より一部を抜粋、編集した原稿です。

タワマン街区には子どもたちが遊べる公園が少ない

「繰り返される〝痛勤地獄〞」

 

まちづくりの会と並行して発足した「武蔵小杉駅を良くする会」(以下、良くする会)では、こうした異常ともいえる混雑ぶりを解消するためにさまざまな取り組みを行ってきた。

 

榊淳司著『限界タワーマンション』(集英社新書)
榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)

上の写真は、朝のラッシュ時に撮影されたものだ。ようやくホームにたどり着いても、待ち受けているのはこのようなすし詰め状態の車内だ。また、ホームが混雑していると、転落の危険もある。

 

2019年の3月上旬に川崎市に取材したところ、JR東日本が公表しているホームドア整備計画では、南武線については2025年度末までに整備される路線に含まれているとのことであった。一方、横須賀線については2032年度末頃までに整備される路線とされているが、横須賀線を走る車両にはさまざまな種類があってドアの位置を固定しにくいという問題があるのではないかとのことであった。

 

さらに、横須賀線・武蔵小杉駅には新たに下り線の専用ホームが設置されることになっている。2023年の使用開始が目

標だという。

 

寒空や炎天下の中を歩かされる園児たち

 

武蔵小杉の街を歩くと、気付くことがある。公園をほとんど見かけないのだ。

 

まちづくりの会の方々に聞くと、保育園も不足しているという。それはそうだろう。後述するようにタワーマンションによって短期間に7000もの世帯が増えたのだ。1000人単位で保育園を増設しないと足りなくなる。

 

タワマンは通常のマンションに比べて世帯数が数倍以上に膨らむ。人口が増えれば当然保育園や小学校への入園・入学者が一気に増加するのだ。

 

川崎市の担当者に尋ねたところ「タワマンができ始めた頃にはその価格が高額なことから、子育て層よりも年齢的に高い人々の購入が中心であると想定していたところはあった。しかし、現在はしっかりと予測を立てて保育園や小学校の新設や増設を行っている」ということだった。

 

確かに、国の基準による待機児童の数は、2019年4月時点では、武蔵小杉駅のある中原区で5人ということになっている。川崎市の保育園関連の予算も2019年度は11.4パーセントも増額された。市として認可保育所の新設等により待機児童の解消に取り組んでいる姿勢は窺える。

 

しかし、現状で武蔵小杉のタワマン街区には子どもたちが遊べる公園が少ない、というのは厳然とした事実だ。タワマンを作る際に設けた公開空地は、居住者以外も通り抜けはできるが、そこは「公園」ではない。子どもの育ちに必要なのは、安心して自由に遊べる空間だ。

 

まちづくりの会によれば、この地域で子育てをする人々は、ショッピングモールの屋上などで遊ばせる人が多いという。また、園庭のない保育園が急増したため、寒空でも炎天下でも保育園児が数珠つなぎになって公園へ出掛ける姿が街のあちこちで見られるとのことだった。

 

武蔵小杉駅周辺は、かつてさまざまな企業の工場やグラウンドなど、大きな敷地がたくさんあった。こうしたまとまった敷地があったからこそ、今日のようなタワーマンションが密集する地域となったわけだが、その陰で、子どもたちの遊び場が失われているのではないだろうか。立派な公園でなくてもよいから、せめて囲いがあって、車や自転車の出入りがなく、安心して遊べる空間があればよいのだが……。

 

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限界のタワーマンション

限界のタワーマンション

榊 淳司

集英社新書

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