新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

人生100年時代は「働き続ける」という解決策

人生100年時代の生き方改革と不動産

 

人間の一生は加速度的に伸びています。2015年1月、NHKスペシャル「NEXTWORLD私たちの未来」において、先進国では1日あたり5時間というスピードで平均寿命は伸び続け、2045年には100歳に到達するとの予測があることが紹介され、話題となりました。2018年10月、厚生労働省の社会保障審議会年金部会は、90年生まれの女性の約20%が100歳まで生きる可能性があり、男性の44%、女性の69%が90歳まで生きる可能性があると言及しています。

 

これを、現在還暦を迎えた60年生まれに限ってみても、男性の38%、女性の64%が90歳まで生きる可能性が高いとされています。

 

人間の一生は加速度的に伸びています。(※写真はイメージです/PIXTA)
人間の一生は加速度的に伸びています。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

長生きするのはけっこうなことですが、年金や医療、介護などにかかわる社会保障給付費の急増は国家財政の破綻を招きかねない問題となってきています。2018年度で社会保障給付費は約121.3兆円ですが、国の試算によればこの額は2040年には790.6兆円と、なんと6.5倍に膨れ上がることが予想されています。

 

そこで打ち出されたのが、高齢者にもっと働いてもらおうというものです。現在、大企業を対象に65歳までの雇用確保義務(全企業適用は25年から)が課せられていますが、これをさらに延長しようという動きがあります。具体的には高齢者の希望次第で70歳まで働くことができる制度を設け、21年4月から適用するものです。

 

また年金支給もこれまでの60歳から70歳までに支給開始を選択できる制度から、これを75歳まで延長する改正も行なわれました。年金をもらわずに、もっと働き続けることによって、年金支給を遅らせ、その分支給額を多くしようという試みです。このようになると、将来的には現在は65歳からの本格的な年金支給開始がさらに延びるのではないかという危惧も生まれてきます。

 

年金の支給が夏の道路に現われる「逃げ水」のように先送りにされ、支給額も減額される時代、サラリーマンはこれまでのように60歳定年を前提とした人生計画を描きづらくなっています。

 

サラリーマンの選択肢は2つです。

 

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不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

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