新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

住宅は購入しないで「住みこなす」ものになる

他方で国は、これまでのように高齢者ばかりを対象にした社会保障制度を見直し、立ち行かなくなった人たちに手厚い失業手当や大学までの教育費の無償化などを支援するような制度設計の変更が必要になるでしょう。社会保障の役割は高齢者のためだけにあるのではありません。これまでの制度の延長線上の考え方でいくら小手先をいじくっても、もはや問題の解決には程遠い状態に日本は陥っています。サラリーマンも国の手厚い支援のもと、何度でも活躍できる社会にすること、これこそが高齢化社会ニッポンの未来図なのではないでしょうか。

 

ポスト・コロナ時代において、多くの日本人が、これまでの常識から自由になり、人生二毛作、三毛作を構築し始めれば、不動産に対する価値観も大きく変わるはずです。都心部にあるオフィスに通うために、膨大な借入金でマンションを買うという行為も、少なくなるでしょう。リモートワークが中心の働き方になれば、自分の趣味趣向に合わせた家選びがあたりまえになるでしょう。自分が好む街に住み、好きな時間に好きな仕事をする。会社という組織に従属し続けるのではなく、人生のステージごとに働く内容、働く場所を変えていく、つまり人生を自らがスケッチしていくたびに、そのステージに相応しい家やオフィスを選択していくようになるでしょう。

 

このように考えるならば、家は何も一生かけて買うものでもなく、時と場合に応じて「住みこなす」もの、消費財に近い存在となってくるでしょう。そして人はこれまで不動産に対して、稼いだお金のかなりの部分を支払っていたことをやめ、自分の人生を充実させるための軍資金として活用し始めることでしょう。ポスト・コロナで時間のゆとりが生まれ、さらにお金のゆとりが生まれる。これが人生をさらに豊かなものにしていくのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

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