新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

サラリーマンとて人生設計を真剣に構築し直す必要が

定年延長制度に乗って、できうる限り会社に雇い続けてもらうという選択がひとつ。ただし、収入はかなり減額され、昔の部下に仕えなければならないなど、悲哀を味わう日々が待っています。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

そして2つ目が、自ら起業する、専門的な仕事で働くなどの選択です。ところが、多くのサラリーマンは、学校を出てからずっと同じ会社で滅私奉公を行なってきた人たちが多いので、自分が勤めていた会社については深い知識があっても、他社、ましてや他分野の会社について何も知見がない、という人が大半になってしまいます。たとえば中小企業診断士などの資格を取っていても、実際に資格を活かした実務を行なってきたわけではないので、いきなり社会に出て顧客を取ってこられるほど世の中甘くはありません。

 

また企業にとっても高齢者を雇用し続けていくことは、企業経営の大きな重石となってしまいます。日本人の一生と企業の雇用制度が今後、どんどんミスマッチを起こしていくことは明らかです。

 

つまり、ポスト・コロナの世の中では、サラリーマンとて人生設計を真剣に構築し直す必要が出てくるのです。

 

たとえば人生70歳まで働くと仮定して、サッカーの試合と同じように仕事を「前半戦」と「後半戦」に分けて戦ってみるのはどうでしょうか。22歳から47歳まで企業で働いていったん定年退職。そして48歳からは後半戦を戦うにふさわしい次のステージを自ら構築していくのです。

 

多くの大企業では47歳くらいになれば、会社内の出世競争にはおおむね決着がついています。そこで会社は47歳定年制として、選抜した社員だけを経営層として残します。そうすれば、出世できずに不貞腐れた社員に70歳まで延々と働いていただく必要がなくなります。人件費は抑制され、浮いた分を若くて優秀な社員に上乗せできます。重要な役職を早くから与えることもできるようになります。社員も待遇が上がって士気も上がります。国際競争力もアップするに違いありません。良いことづくしです。

 

いっぽうで志破れた社員にとっても、次のステージに再チャレンジができます。60歳や65歳ならば新しい職種を選ぶことも難しいですが、47歳であればまだまだ体も若く、チャレンジがしやすいというもの。違う会社に入って役員をやってもよいでしょうし、独立起業するにも十分時間が残されています。47歳定年であれば、それまでの間も緊張感を持って仕事をし、当然人生の後半戦に向けて作戦を立てて生きていくことをおのずと選択するようになります。働いている間でも勉強するでしょうし、副業も真剣に始めることでしょう。

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不動産激変 コロナが変えた日本社会

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