白内障は、60代で約80%、80代でほぼ100%と、だれもが罹患する病気です。しかし、甘く見て放置していると、その裏で深刻な病気が進行しているケースもあるため注意が必要です。本記事では、白内障の手術を検討している人に向け、手術前の検査項目について平易に紹介します。※本連載は、渡邊敬三氏の著書『誤差ゼロを追求する 渡邊式・白内障治療』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

「眼軸長・角膜形状解析・前房深度」の検査は特に重要

これらは、安全で確実な白内障手術を行うにはどれもおろそかにできない大切な検査です。なかでも眼内レンズによる術後の屈折誤差を少なくするために重要なのは、7の眼軸長(眼の奥行き)、8の角膜形状解析、9の前房深度の三つです。

 

眼内レンズは単焦点眼内レンズや多焦点眼内レンズなど多種多様なものがあり、それぞれの度数はおよそ50段階に分かれています。そのなかから、患者さんの眼に最適な度数を選び出さなければなりません。そもそも眼内レンズの度数を決めるには、専用に開発された「度数計算式」というものを使用します。1980年代に最初の計算式が登場し、現在も日進月歩で新しい方式が提案されています。

 

しかし、まだ完璧といえるような計算式は存在しません。誤差の生じやすい弱点となる部分がそれぞれ残っており、そのため医療機関によって治療に採用している計算式が異なるのが現状です。筆者のクリニックでは「SRK/T式」および「Barrett式」と呼ばれる計算式を標準的な眼に対して使用しています。特に精度が高く、最も多く使われているスタンダードな計算式です。また強度近視の人には「Haigis式」という計算式を参考にすることもあります。

度数計算式は「ブラックボックス」?

計算式には最も多く使われている「SRK/T式」のほかに「Barrett式」、「Haigis式」などの種類があると上述しましたが、実はその詳しい内容は公表されていません。例えば筆者のクリニックで採用している「SRK/T式」は、眼軸長と角膜曲率半径の測定値を使用しますので、それらを基に最適な度数と角度を予測していることが分かります。計算式として比較的新しい「Haigis式」や「Barrett式」は、これらに加えて前房深度や水晶体の厚みを使用することが特徴的ですが、公表されていない部分もあります。最近ではAIを利用した予測式も登場しています。

 

いくつもの計算式が今も登場していることは、見方を変えれば、それほど最適な度数を予測するのが難しいことを表しています。計算式を開発する人たちも、白内障手術後の屈折誤差を少しでも減らそうと懸命に取り組んでいるのでしょう。

 

筆者も屈折誤差をなくすために努力を重ねています。複数の検査機器で眼軸長と角膜曲率半径を測定している理由は、1種類の検査機器だけでは測定値そのものに誤差が生じる可能性があるからですが、仮に測定値が正しかったとしても、それを入力して使う計算式のほうに問題があるのではないかと感じるときもあります。

 

一般的に手術後に手術前後の屈折値を機械に入力し、計算式を最適化する作業を行っている医療機関もありますが、そもそも測定結果が正しくない場合には、結局誤差が生じてしまうことに変わりはないと考えています。

 

やはり現状では複数の検査機器による測定値をそれぞれ計算式に当てはめ、出てきた複数のデータを医師が総合的に判断し、眼内レンズの度数を決めるのがベストの方法だと考えています。
 

 

 

渡邊 敬三
南大阪アイクリニック 院長

 

 

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誤差ゼロを追求する 渡邊式・白内障治療

誤差ゼロを追求する 渡邊式・白内障治療

渡邊 敬三

幻冬舎メディアコンサルティング

手軽に白内障手術を受けられる時代だからこそ正しい知識とクリニック選びで、術後の視力は劇的に変わる! 患者一人ひとりのQOL(生活の質)の向上こそが白内障治療の最大の目的である。 「最善の白内障治療法」を日々追…

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