実は認知症のタイプにより症状や経過が少しずつ異なり、経過も治療も予後も介護の仕方も違ってきます。正しい診断を受けているか判断するためにも、認知症についての知識を深めておく必要があります。今回は、医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏の共書『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、アルツハイマー型認知症について詳しく見ていきましょう。

 

老人斑(シミ)はアミロイドベータと呼ばれる蛋白(amyloid β protein:Aβ)が脳組織の細胞外に沈着・凝集・集合してできたゴミです。この蛋白の働きを決定しているAPOE(アポリポ蛋白E4:Apolipoprotein E4)遺伝子にはいくつかのタイプがあり、APOE4型を持つ場合、持っていない方に比べて特に若年性アルツハイマー型認知症になりやすいことが明らかになっています。

 

無症候性被験者において、Aβ堆積が灰白質萎縮および記憶障害と関連していることが明らかになっており、灰白質萎縮の早期徴候が、海馬と後帯状、楔前部領域で検出され、さらに、疾患の進行とともに灰白質萎縮は側頭葉へと拡大していくことも分かっています。

 

すなわち、このアミロイドβは健康な人でも、加齢や種々の血管系危険因子などによって脳に蓄積され、神経細胞を傷めて脳を萎縮させます。このことが分かっていても、現在までのところ、これは防ぎようがないとされているのです。

脳の萎縮は絶対に防ぐことが出来ないのか?

しかし、対策がないわけではありません。近年の研究では、食事や運動など生活習慣の改善によって、アミロイドβの生成を発現・時期ともに抑えられることが分かってきています。

 

また、脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-derived neurotrophic factor)という液性蛋白質が海馬などで発現することが分かり、研究が続行中ですが、BDNFは学習機能や記憶力を高め、神経細胞の分化・シナプス機能亢進・成長を促進したり、アミロイドβの毒性に対して抑制的に働くとされています。

 

また、アルツハイマー型認知症では、アミロイドβ沈着(老人斑)とともに、神経線維が神経原線維変化(リン酸化タウ蛋白が沈着・凝縮によって起こるオタマジャクシ様・らせん状の変化:タウオパチー)を起こし、神経細胞障害(脱落)に関与することが分かっています。

「アルツハイマー型認知症」の症状とは

症状としては、記憶障害、見当識障害(日付・時間・場所・人が分からなくなる)、意欲の低下、献立を思いつかず同じ料理を作るといったものから始まって、だんだんと日常生活が難しくなり、会話が難しい、料理を放棄する、暴力的になる、引きこもる、1人で買い物ができない、徘徊、場所が分からない、転倒を繰り返す、尿失禁などの現象がみられるようになります。

 

発症したばかりの時期は、「老化によるもの忘れ」との区別がつきにくいという特徴があります。

 

家族は、初期の症状である「同じことを何回も言う」、「家事や趣味など今までできていたことをしなくなった」、「物を探すことが多くなった」、「同じ物を買ってくる」、「約束の場所や日時をよく間違える」、「もの盗られ妄想がある」などによって気づくことが多いようです。次いで見当識障害が時間、場所、人の順で悪化していきます。

 

末期になるまでは感情は保たれ、運動障害は出現しませんが、もの盗られ妄想が軽重を問わず現われるのが特徴です。さらに症状が進むと、妄想、錯乱、徘徊などがみられます。そして末期になると、家族を認識できない・無言(会話ができない)・失禁などがみられ、寝たきりの生活となります。進行はとても遅く、2年~20年ぐらいかけて、ゆるやかな坂を下るようにゆっくりと変化していきます。

 

 

 

※本記事は連載『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』を再構成したものです。

 

 

梶川 博
医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長

 

森 惟明
医学博士

 

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