コロナ禍による世界的不況、日本はギリシャと同じ道を辿るのか

コロナ禍の影響による再三の財政出動が影響し、いずれの国も財政状況悪化は免れられません。日本は以前より政府の財政赤字が指摘されており、不安を感じる人も多いでしょう。そこで胸をよぎるのが、約10年前のギリシャのこと。政権交代の折に巨額の財政赤字が露呈し、財政破綻しました。菅政権へスイッチし、さらなるコロナ禍の影響で経済の手当てに追われる日本が、ギリシャと同じ道を辿る心配はないのでしょうか。元バンカーの経済評論家・塚崎公義氏が解説します。

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最大の違いは「ギリシャはユーロ圏である」という点

皆さんは2009年以降の「ギリシャ危機」のことを覚えているでしょうか。ギリシャ政府は、巨額の財政赤字をなんとかしようと増税しましたが、それによりかえって景気が悪化し「これ以上増税すると暴動が激化しかねない」という状態になったため、増税を諦めて借金を踏み倒しました。ギリシャの財政破綻です。

 

日本政府の財政赤字があまりにも巨額なため、ギリシャと同じように日本の財政も破綻するのではないか、と心配している人が多いようです。しかし、日本はギリシャとはまったく異なるので、日本の財政が破綻することは考えられないのです。

 

その最大の違いは、ギリシャがユーロ圏の国だ、ということです。ドイツ等と同じ通貨を使っているので、便利なことも多いのですが、不都合なことも多く、とくに困ったときの対策に制約が多いのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本は経常収支が黒字で、対外純資産もプラス

日本人投資家にとって、日本国債は最も安全な投資先といえるでしょう。日本国内では、メガバンクに預金するより安全ですし、現金で持つとしても日本銀行券は「日本政府の子会社が発行した紙切れ」に過ぎませんから。

 

海外の、たとえば米国債は日本国債よりも元本償還は確実なのかもしれませんが、米国債を持つことにより為替リスクが生じてしまいます。ドル安になって損をしてしまうリスクがあるわけです。したがって、日本人投資家は(消去法的ではあるが安定的に)日本国債に投資します。

 

多くの日本人投資家が日本国債を買うと、日本政府の資金繰りが安定するので、一層大勢の日本人投資家が日本国債を安心して買うようになります。投資家たちが暗黙のうちに互いに「励まし合う」わけです。このあたりのことは拙稿『投資家が「破綻を憂慮するのに、日本国債を買う」当然の理由』をご参照いただければ幸いです。

 

一方のギリシャでは、ギリシャ人投資家が為替リスクなしにドイツ国債等を購入することが可能です。したがって、ギリシャ人投資家の資金が安定的にギリシャ国債に投資されるということは(愛国心以外には)期待薄なのです。

 

もうひとつ、ギリシャ国債の投資家が不安定である大きな要因があります。ギリシャは経常収支が赤字で、国全体として外国からの借金が必要であり、ギリシャ政府も外国人投資家に国債を買ってもらう必要があったのです。外国人投資家は、ギリシャ人投資家以上にギリシャ国債を買うインセンティブが薄いため、需要が不安定なのです。

 

その点も日本との大きな違いです。日本は経常収支が黒字で対外純資産もプラスであるため、日本政府は日本人投資家だけに国債を買ってもらえばいいからです。

 

余談ですが、将来日本の経常収支が赤字になり、対外純資産がマイナスになり、外国から借金をしなくてはならない事態に陥ったら、日本政府が破産する可能性は一気に高まります。外国人投資家にとっては、日本国債は信用リスク(元本が償還されないリスク)があるうえに、為替リスクもあるわけですから、よほど高い金利を支払わないと投資してもらえないでしょうし、投資してもらっても逃げ足は早いでしょう。

 

上記のように、いまの日本では投資家たちが「励まし合っている」わけですが、それが期待できなくなる、という点も痛手でしょう。

 

もっとも、現在の経常収支が巨額の黒字であることを考えると、日本の対外純資産がマイナスに陥る可能性は低いでしょうから、過度に悲観する必要はないと思います。頭の片隅に置いておく程度でいいでしょう。

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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