認知機能が正常範囲にあっても、一定以上の記憶障害を示すグレーゾーン(正常と認知症の中間に位置づけ)とされる軽度認知機能障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)が注視されています。今回は、医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏の共書

「軽度認知障害」とは、どんな障害なのか

認知機能が正常範囲にあっても、一定以上の記憶障害を示すグレーゾーン(正常と認知症の中間に位置づけ)とされる軽度認知機能障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)が注視されています。

 

軽度認知機能障害とは?(画像はイメージです/PIXTA)
軽度認知機能障害とは?(画像はイメージです/PIXTA)

 

軽度認知障害者の1/3~1/2が3年以内に認知症に進展する(年間約10%)といわれることから、MCIは認知症予備軍(前兆)と認識し、この段階を重くみることで認知症の早期発見や予防に役立つとされています。MCIの要約は次の5項目となります(Petersenらにより2001年に定義されたものをもとに作成)。

 

1)記憶障害の訴えが本人又は家族から認められている
2)日常生活動作や社会生活には問題はない
3)全般的認知機能は概ね正常(病気とは呼べない状態)
4)正常な高齢者に比較して記憶が低下している(年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する)
5)認知症ではない

 

検査で、「健康」(CDR0)と「軽度認知症」(CDR1)との中間の状態である0.5と判定されると、概ねMCIに相当します。

「記憶を除く認知機能」は正常なので、認知症ではない

MCI患者の場合、通常、記憶力の軽度の低下(記憶障害)を訴えても日常生活に大きな支障はなく、記憶を除く認知機能は正常範囲です。このため、MCIは認知症とは区別される状態とみなされます。本人が認知機能の低下を自覚した場合、または周囲の者が認知機能の異常を疑った場合、まずMCIか認知症かを選別する必要があります。

 

[図表1]MCIの臨床認知症評価表

 

MCIは記憶障害のみの病気ですが、臨床的にも病因論的にも多様性、多因性を有しており、認知症との判別は難しいのが実情です。

MCIは「健忘型」と「非健忘型」に分類される

MCIは記憶力障害を示す「健忘型MCI」と、記憶力以外の認知機能障害を呈す「非健忘型MCI」の2つの病型に分類されます。MCIの段階で既に側頭葉内側の海馬・海馬傍回の萎縮がみられる場合は、その後のアルツハイマー型認知症の発症が強く懸念されます。

 

[図表2]認知症(アルツハイマー型)の重症度別の主症状

 

MCIから認知症への進展予防のために有効なものとして、ドネペジルの認知機能改善効果を挙げることがありますが、科学的根拠はまだ十分ではありません。

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

次ページ将来必ず認知症を発症するわけではない!?
改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

梶川 博、森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

「脳梗塞・認知症・運動器症候群」 三大疾患 徹底解説シリーズの改訂版! 三大疾患「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」を治療・予防することで「寝たきり」と「認知機能低下」を防ぎ、高齢者が自立して健やかな老後…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧