すぐ「許せない」と怒る人は、結局自分を一番深く傷つけている

うつ、不安・緊張、対人関係の問題、依存症――近年、これらの悩みを抱える人はますます増えている。実は、それぞれに共通する原因になり得るものとして、親との関係によって築かれる「愛着」がある。ここでは、「愛着アプローチ」という手法を用いて、現代人の悩みの解決に寄与したい。※本連載は、精神科医・作家である岡田尊司氏の『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』(光文社新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

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愛着が不安定な人は、人生にも否定的な評価を下しがち

愛着が安定した人は、つねに肯定的に物事を受け止めようとする。ありのままを寛容に受け入れ、悪い点よりも良い点に目を向け、その物事が与えられたことを喜ぼうとする。

 

一方、愛着が傷を受け、不安定な人は、悪いところにばかり目が行きがちで、現状を喜ぶよりも、不満や怒りや攻撃が多くなってしまう。現状がまったく同じであったとしても、そうした受け止め方の違いがあるために、愛着が不安定な人では、自分にも他者にも、この世界にも、人生にも否定的な評価をしてしまうので、どうしても幸福度が下がってしまう。同じような境遇を生きていても、面白くない人生になってしまう。

 

それは、損なことである。これを変えていくためには、物事をありのままに受け止めることが大事になる。悪いところを非難したり不満に思うよりも、良いところに目を向け、そこに満足や喜びを見出せると、ずっと生きやすくなる。

 

ありのままに受け止める実践的修練として、今、その効果が注目されているのが「マインドフルネス」や、マインドフルネスを取り入れたカウンセリングである。マインドフルネスとは、物事を良い、悪いで価値判断するのではなく、ありのままに感じることで、豊かな気づきを得ることである。もともとは、サンスクリット語の「sati(気づき、悟り)」を英語に訳した言葉で、とらわれを脱し、自由な境地を得ることを意味する。

 

マインドフルネスは、ヨガや瞑想から発展したものだが、キリスト教の文化圏でも受け入れやすいように、宗教色を取り去った純粋な心理的技法として確立されたことで、急速に普及している。科学的にその効果が立証され、医学的な治療にも採り入れられている。うつや不安やイライラ、怒りに非常に効果的であることが裏付けられており、単に認知だけでなく、身体的な反応にも働きかけることで、より深い効果を生んでいる。

 

愛着が不安定な人では、悪い点に目が向いてしまうことで、不完全な自分や他者を否定的に評価してしまうが、それがうつやイライラの原因にもなる。現状が七十点で、まずまず合格点だったとしても、百点の理想の状態と比べて、まったくダメだと思ってしまう。

 

マインドフルネスでは、認知療法のように、その受け止め方が「偏っている」といったことは問題にしない。偏った受け止め方を良い受けとめ方に直そうということもしない。なぜなら、そうすることが、また「理想の状態でなければいけない」と考えることにつながるからだ。治そうとしている状態を、また作ってしまうことになるからだ。

 

マインドフルネスでは、良いとか悪いといった価値判断はせず、ありのままに受け入れてそれを感じることを目指す。良いとか悪いとかいった価値判断から自由になることを目指すのだ。

 

価値判断とは、ある意味で「とらわれ」である。今現在、うつとか不安といった症状があっても、それを「治さねばならない悪いこと」とみなさず、そのまま受け入れようとする。症状を治すことにとらわれないことで、症状から自由になる。こうした発想も、症状を治療目標にしない愛着アプローチと親近性が高いといえる。

 

ただ、マインドフルネスも、愛着アプローチと同様、ただ頭でわかっても実践できるわけではない。修練を積むことで「身につけて」いく必要がある。実践する中でしか、会得できないのである。しかしいったん身につくと、些細な日常も、味わい深い発見に満ちた新鮮な体験になる。不調なことやうまくいかないことがあっても、それが悪いこととはならず、「これも人生の味わいの一つだ」と、大切に感じられる。何か特別なことをしなくても、ここにあるということ、存在するということ自体を楽しめるようになる。

 

そうした境地にたどり着くために、どうしたらいいのか。マインドフルネスでは、生きることの原点である「呼吸」や「体の感覚」に注意を向け、それをありのままに感じることから始める。そこを基本にしながら、不快な体験や不安な感覚もありのままに受け止め、味わうことで、乱されない心と豊かな気づきを手に入れていく。

 

マインドフルネス体験は、母親の腕に抱かれた子どものように、ありのままに受け止められ、包まれるような体験だともいえる。それが、不安定な愛着を抱えた人にもなじみやすく、また体得すると、自分一人でもできるようになるので、安全基地に恵まれない人にとっても、安心の拠り所を与えてくれる体験となる。

物事を「良い・悪い」の二分的思考で考えるのは危険

愛着が不安定な人に共通する特徴は、「許せない」と思うと、そのことにとらわれ、全部を否定してしまい、相手のいいところさえ見なくなってしまうことである。どんなに素晴らしい存在であれ、長く接するうちには、期待外れな面も出てくる。そこを寛容に受け入れられないと、次第に「許せない存在」へと変わっていく。

 

許せないことは、その人からすると、絶対に譲歩できないとても大事なことなのだが、もっと大きな視点で見ると、本人自身の世界を狭め、他の対人関係にも影を落として、適応力をそいでしまっている。傷つけられた思いに執着することで、自分の存在価値を守ろうとしているのだが、客観的に見ると、自分を苦しめ、大きな損を蒙っている。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

では、どうすれば、それをうまく克服できるのか。「許せない」と思ってしまう原因は、一部分に過ぎない点を、すべて悪いと全否定にすり替えてしまう思考パターンにある。その根底にあるのは、物事を「良い」と「悪い」の二つに分けて考える二分法的思考であり、良い悪いで評価してしまうクセだ。

 

この二分法で評価するクセは、親の期待に沿えば「良い子」、期待に反すれば「悪い子」とみなされ、罰を受けてきたことに由来していることが多い。かつて自分がそうされたように、「悪い子」だとみなした人を、許せないと全否定してしまうのである。

 

本当は、親の基準で評価されるのではなく、その子の求めているものやその子の気持ちを汲み取って共感してもらえていたら、そうした二分法的評価に染まらなかったのだが。さらに、この思考パターンは、物事の原因を説明するためにも使われる。

 

うまくいかないことや思いに反することがあると、それは、相手が「悪い子」「悪い人」だからそうなってしまうのだと考えるのだ。つまり、うまくいかないことや嫌なことは、誰か「悪い人」のせいだという思考パターンが出来上がっているのである。

精神科医、作家

1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで困難な課題を抱えた若者に向かい合う。現在、岡田クリニック院長(枚方市)。大阪心理教育センター顧問。

著書に『愛着障害』『回避性愛着障害』『死に至る病』(以上、光文社新書)、『ストレスと適応障害』『発達障害と呼ばないで』(以上、幻冬舎新書)、『パーソナリティ障害』(PHP新書)、『母という病』(ポプラ社)、『夫婦という病』(河出書房新社)、『マインド・コントロール』(文藝春秋)など多数。

小笠原慧のペンネームで小説家としても活動し、『DZ』『風の音が聞こえませんか』(以上、角川文庫)、『あなたの人生、逆転させます』(新潮社)などの作品がある。

著者紹介

連載親子、友人…対人関係が上手くいかない人へ!「愛着障害」を克服する方法

愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる

愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる

岡田 尊司

光文社

幼いころに親との間で安定した愛着を築けないことで起こる愛着障害は、子どものときだけでなく大人になった後も、心身の不調や対人関係の困難、生きづらさとなってその人を苦しめ続ける。 本書では、愛着研究の第一人者であ…

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