介護できる入居者とできない入居者が存在する
ここで考えてみてください。医師の資格が、内科用とか皮膚科用とか、というように診療科目別に分かれているのでしょうか? いいえ、分かれてはいません。医師は医師としての資格なので、皮膚科の先生でも内科の先生でも、医師になるための試験は同じであり、その時点では取得している知識や技術はおおむね同じレベルのはずです。もちろん、研修医時代に自身の専門性を見出し、専門の診療科目に必要な知識や技術を習得していくとは思いますが……。
ただし、医療の場合、同じ資格の下で医療行為をしていても、実際は医師は高度な専門性に特化し、自身の診療科目を決めていき、やがては、その診療科目以外は専門外ということで診療はしなくなります。もちろん、地方などでは医師不足も手伝い、何でも診なければならない立場の医師も存在しているとは思いますが……。
いたって常識的なことで言うなら、皮膚科の専門医は「お腹が痛い」と言う患者が来れば、内科受診を勧めるのが普通でしょう。
実は介護も同じです。老人ホームごとに対応できる入居者の状況とできない状況とがあるという現実を、読者の皆さんには、まずはしっかりと理解してほしいと思います。ひと口に高齢者といっても千差万別、老人ホームは要介護状態によって得手不得手があるということなのです。
元気な認知症の高齢者と、身体が不自由で介護が必要な高齢者とでは、対応するためのスキルが違います。ましてや、要介護の高齢者と自立の高齢者とでは対応の仕方はまったくの別物です。この2つの入居者を同じホームで対応すること自体、まともな話ではありません。
しかし、多くの老人ホームでは、いまだに「何でもできます」的なセールスを行い、どのような状態の高齢者でも対応が可能であるという、根拠のない自信を見せている老人ホームも少なくありません。老人ホームを選ぶさいには、「Aの状態の高齢者は自分のホームでは対応できません。その理由はBだからです」という、きちんとした話ができるホームを選ぶようにしてください。
なお、自立の高齢者が、将来の不安に備えて介護付きの老人ホームなどに早めに入居するケースも多々あります。その場合、入居者や家族の心構えとしては、すでに入居している要介護高齢者が将来の自分の姿です。彼らのありのままの姿をしっかりと受け止め、彼らを見て将来の自分に備えなければならない、という気持ちが持てなければ、地獄のような生活になります。熟慮して入居の決断をしてほしいものです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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