※本記事は、弁護士の稲葉治久氏の著書『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編したものです。最新の情報・税制等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

「実は自分の子どもではなかった」と判明したら?

では、胎児認知を行った後に生まれた子どもが、実は自分の子どもではなかったことがわかった場合にはどうすればよいのでしょうか。

 

実際、このようなケースは頻繁に起こっていますが、いったん認知をしてしまった以上は、法律上の親子関係は発生してしまっています。

 

そのような状況を覆すためには、裁判所に「親子関係不存在確認の訴え」を提起することが必要となります。これは、特定の子どもとの間に親子関係がないことを裁判所に確認してもらいたいときに起こす訴訟類型です。

 

この裁判の結果、認知した子どもとの間に親子関係が存在しないことが認められれば、認知の効果は失われます。

 

その場合、女性に対して養育費を支払っていれば、本来は払う必要がなかったお金を払っていたことになるのですから、その返還を請求することができます。

 

また、子どもの本当の父親が誰かがわかれば、その父親に対しても養育費の返還を求めることが可能です(ただし、この場合、その父親と子どもの間に親子関係があることを確認する訴訟を起こすことも必要となります)。

 

なお、認知を否定することを目的とした訴訟の種類としては、ほかに「認知無効の訴え」があります。相手の女性が認知届を偽造して提出したような場合に、その届出を無効にするために行うもので、「届出を出すことに合意していたか」「届出の文字は本人のものか否か」などの点が裁判では争われることになります。

「遺言認知」という方法の意外な活用術

人の心は、時の流れのなかで大きく変わる可能性があります。若いときに認知を求められて拒んだものの、死を意識する年を迎えて「やはり、あの子を自分の子どもとして認めてあげよう」という思いが生まれることもあるかもしれません。

 

その場合には、もちろん認知届を作成すればよいだけですが、もし家族などのことを慮って「できれば、ほかに子どもがいることを知られるのは自分の死後にしたい」というのであれば、「遺言認知」を活用するとよいでしょう。

 

遺言認知は、その名称が示すように、「○子を自分の子どもとして認知する」などと遺言書の中で認知を行うことです。効果そのものは、通常の認知と何ら変わりありません。

 

ちなみに、この遺言認知は、認知を求めてくる女性を説得するための方法としても使える可能性があります。

 

「今すぐには立場上、認知できないが、死ぬ前に必ず遺言書を書き、子どもが財産を相続できるようにする。とりあえず、今は養育費だけで我慢してくれ」などと約束すれば、相手が認知を求めないことに同意してくれる可能性はより高まるかもしれません。
 

 

稲葉セントラル法律事務所
稲葉 治久 弁護士

 

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男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

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稲葉 治久

幻冬舎

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