「これを食べると病気にならない」といった根拠のない健康情報番組や、芸能人にちょっとした異常値が見つかっただけでおそろしい病気が見つかったような過剰な演出を行い、受診者の寿命が極端に短いがごとく煽動する番組など、視聴者(患者)に誤った医療知識を植え付けてしまうTV番組が後を絶ちません。今回は、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「医療安全」を実現させるために必要なことを解説します。
おそらく多くの皆様が壺Ⅰを選びます。よく考えていただくと確率的にはどちらの壺を選んでも玉の色が当たる確率は同じです。しかし、不確実な壺Ⅱを選ばないのです。これを
エルスバーグのパラドックスと呼び、人は不確実性を回避しようとします。
統計的確率を適用できるのが「リスク」、統計的確率を適用できないのが「不確実性」と考えられます。医療においてはリスクよりも不確実な要素が大きいわけです。事前にリスクを設定することができないからです。トランプ大統領が危惧されているのはリスクが高いからではなくて、不確実性が高いからだと考えます(まるでトランプのようにどのようなカードが配られるかわからない)。
医療においても患者はリスクよりも不確実性を嫌うものですし、経営とは不確実な中で意思決定を行うものですが、病院経営者にもこの不確実性を嫌う方は多くいます。現状維持バイアスとともに、イノベーションを阻害します。
※本記事は連載『MBA的医療経営』を再構成したものです。
角田圭雄
愛知医科大学/内科学講座肝胆膵内科学准教授
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愛知医科大学
内科学講座肝胆膵内科学准教授
愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学准教授(特任)。一般社団法人日本医療戦略研究センター(J-SMARC)代表理事。医師、博士(医学)、MBA(医療経営学修士)。
1970年大阪府生まれ。1995年京都府立医科大学卒業、2002年京都府立医科大学大学院で博士号(医学)を取得。市立奈良病院消化器科部長、京都府庁知事局知事直轄組織給与厚生課健康管理医(総括)、京都府立医科大大学院医学研究科消化器内科学講師を経て2016年10月から現職。2015年英国国立ウェールズ大学経営大学院でMBA in Healthcare Management(医療経営学修士号)を取得。立命館大学医療経営研究センター客員研究員を兼任。日本肝臓学会評議員・指導医。日本消化器病学会評議員・指導医。日本医療経営実践協会医療経営士3級。
著書に『最新・C型肝炎経口薬治療マニュアル』(2016年4月、編集および共著)『症例に学ぶNASH/NAFLDの診断と治療|臨床で役立つ症例32』(2012年4月、編集および共著)、『最新!C型肝炎治療薬の使いかた』(2012年10月、編集および共著)、『見て読んでわかるNASH/NAFLD診療かかりつけ医と内科医のために』(2014年8月、編集および共著)
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