大地主の父親は、ひとり娘の配偶者を婿養子にすることで、ある程度の節税を行っていました。しかし、その娘夫婦の実子はひとりだけ。せっかく2人に分散した資産は、またひとりに集約されてしまいます。このケースの場合、「養子」を活用した相続対策のメリットはあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

 

孫が祖父母の養子になった場合は実子と同じ扱いになるため、基礎控除のほか、生命保険の非課税枠なども増やすことができますが、注意点もあります。孫が祖父母の財産を相続する場合、相続税の2割加算という制度があり(国税庁、No.4157 相続税額の2割加算)、相続した財産の納税額は通常とくらべて2割増しとなるため、負担は大きくなります。従って、状況によっては必ずしも孫が養子になるメリットがないケースもあり、よく調べることが重要です。

 

 

佐々木さんの場合、数年前の父の相続時、将来の二次相続を考慮して母の配偶者控除の特例を最大限に使うことはせず、父の財産の多くを受継いでいます。とはいえ、母の相続時にも佐々木さんがすべてひとりで相続することになると、祖父の代で父と母に分散していた財産が再び佐々木さんに集中してしまい、またしても相続税の負担が大きくなってしまいます。

 

母の財産を佐々木さんの長男(孫)も含めて相続すれば、佐々木さんひとりに相続財産が集中することは防げます。また、財産の承継を一代飛び越すことで、佐々木さんの母と佐々木さんご自身の相続税額をトータルで抑えることができます。

苗字が変わることもある「養子」はデリケートな問題

実子がいる場合には養子1人、実子がいない場合には2人まで基礎控除額に含めることができるということをご存じの方は多いのですが、孫が相続すると納税額は2割増しになる2割加算については、それほど周知されていないようです。家々の事情によって、孫と養子縁組したほうがいいのか、しないほうがいいのかは異なるため、よく検証することが大切です。

 

ただし、留意すべきは税額だけではありません。苗字の問題といったデリケートな問題もかかわってくるケースがあるため、養子については、事前に家族間でしっかりと話し合って決めることが大切でしょう。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

 

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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