大地主の父親は、ひとり娘の配偶者を婿養子にすることで、ある程度の節税を行っていました。しかし、その娘夫婦の実子はひとりだけ。せっかく2人に分散した資産は、またひとりに集約されてしまいます。このケースの場合、「養子」を活用した相続対策のメリットはあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

不動産の収益は良好で、母親の資産は増える一方

大地主で資産家のひとり娘だった佐々木さんの母親は、祖父の代での相続対策のため、夫(佐々木さんの父親)を婿養子に迎えていました。つまり、祖父の相続時には佐々木さんの両親に財産を分散したかたちです。相続財産のなかには、非常に利便性の高い土地があり、現在も有効活用しています。都心の人気駅のすぐそばの広い土地に、グレードの高い賃貸マンションを建てていますが、空室が出ることもなく、安定した高い収入があり、不動産賃貸業としては上々です。またそれ以外にも、貸駐車場のほか数軒の貸家もあり、佐々木さんの母親の収入はかなりのものとなっています。

 

 

しかしながら、高齢の母親はもともと内向的な性格で、海外旅行等のお金がかかる趣味があるわけでもありません。家のことは家政婦に任せ、ひとり自宅で本を読んだり、映画を見たり、ペットの猫をかわいがったりして、静かに過ごしています。

 

その結果、母の資産は積み上がる一方で、このままでは、将来母親が亡くなって相続が発生したとき、さらに増えた母親の財産を、佐々木さんひとりで相続することになります。また今後、佐々木さんが被相続人となる際には、佐々木さんの子どもたちが大変な思いをすることになるかもしれず、それを非常に気がかりに思っているとのことです。

相続人を増やして節税になるケース、ならないケース

佐々木さんの母親の推定相続人は、実子である佐々木さんひとりです。佐々木さんの家族は、妻と長男・長女の4人家族です。

 

被相続人に実子がいる場合、養子ひとりであれば、基礎控除の計算に含めることができます。現在、基礎控除額は3,000万円+(600万円×相続人数)になるので、母が養子縁組することで4,200万円まで基礎控除できます。つまり、佐々木さんの家族のだれかが佐々木さんの母親と養子縁組すれば、600万円の評価減になります。

 

筆者から上記を提案したところ、ご家族で話合い、佐々木さんの長男が佐々木さんの母親と養子縁組することになりました。

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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