弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』（日本加除出版）のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。
■実家への経済的援助・送金（夫婦共有財産の逸失）の扱い
夫や妻から、自身の実家（主に親）に対して経済的な援助がなされる状況はよくあります。財産分与において、これをどのように扱うかが問題となります。
夫婦共有財産が夫婦外に流出（逸失）したと考えると、計算上は戻すことが公平であるように思えます。一方、もともと親子間には、夫婦間と同じように扶養義務があります。夫（子）から親に金銭を渡すことは何ら不当なものではないともいえるのです。
そこで、具体的な経済面やその他の状況から、扶養の範囲を逸脱しているものではない限りは、実家への援助相当額を夫婦共有財産に戻して計算するという扱いはしません。実際には、援助した金額が一定の規模に達しているケースで対立が激しくなることが多いです。
連載事例で学ぶ～多額の資産をめぐる離婚の実務
本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。
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