「親の愛情に恵まれなかった人」は、どんな人間関係を築くか?

うつ、不安・緊張、対人関係の問題、依存症――近年、これらの悩みを抱える人はますます増えている。実は、それぞれに共通する原因になり得るものとして、親との関係によって築かれる「愛着」がある。ここでは、「愛着アプローチ」という手法を用いて、現代人の悩みの解決に寄与したい。※本連載は、精神科医・作家である岡田尊司氏の『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』(光文社新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

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過去の体験から来る「縛り」や「とらわれ」

人はそれぞれ過去の体験から来る縛りやとらわれを抱えている。ことに、幼いころの愛され方や親との関係は、強力にその人の人生を縛り、左右する。

 

しかし、同時に、人は大きな可塑性や成長する力をもっている。抱えている課題や制約と、そこから自由になり可能性を広げていこうとする力との戦いが、その人の生き様、人生が描く軌跡だともいえる。

 

それでは、その人が抱えている限界や制約を、どうすれば押し広げ、新たな地平へと飛躍させることができるのか。愛着障害の克服は、まさにそうした課題だといえる。

 

愛着アプローチは、本人の安全基地を強化することで、本人の中に備わっている回復しようとする力を活性化させる方法だともいえる。生きる意味さえ見失い、投げやりだった人も、何事にも自信がもてず、挑戦することから逃げていた人も、自分の中の問題を周囲の人に責任転嫁することで自分を紛らわしていた人も、愛着が安定するにつれ、自分の問題に向き合い、自分なりの答えを見出そうとし始める。

 

大それたものでなくても、どんなにささやかでも、自分の手と力で見出した、自分なりの生き方を進んでいこうとし始める。そこから先は、本人を信じて、本人の進んでいく後をついていくように、一緒に進んでいけばいい。もしも本人が駆け込んでくるようなことがあれば、いつでも相談できるように待ちかまえてはいるが、本人の力で何とかなる間は、ただそっと見守り、ときどき報告してくれることに耳を傾ければいい。

 

ここから先は、本人が主役であり、本人の主体的な取り組みと努力によってしか進んでいくことのできない領域だ。もちろん、困ったときや迷ったときには、安全基地となる存在のところにやってきて、その存在と対話をする中で、自分の答えを見つけようとするかもしれない。しかし、最後の決断は本人が下すのであり、安全基地となる存在は、彼の悩みや迷いに付き合うだけである。

 

ここでは、愛着の課題を克服しようと決意し、自分からその問題に取り組み始めたとき、そこにおいて課題となることや、目指すべき方向について述べたい。また具体的な取り組みについて、ヒントになることや使える方法についても考えたい。

 

拙著『生きるための哲学』(河出文庫)では、実際に愛着の課題と向かい合った人々の例を通して、彼らを救うのに役立った思想や考え方を紹介している。そちらも参考にしていただければと思う。

「親」という安全基地にる存在

愛着が安定化するかどうかは、安全基地となる存在に恵まれ、それがうまく機能しているかどうかだということを、これまでくり返し見てきた。

 

そもそも愛着障害とは、親の愛情に恵まれなかった人に起きた、愛着の傷に起因する問題である。そのことに気がついて、それを取り戻そうと必死にかかわろうとする親もいるが、本心からその人に対して愛情を感じることができない場合には、結局かかわることを面倒がってしまったり、かかわり方を変えようと努力してみても、つい地金が出て、その人を責めたり拒否したりしてしまうことも少なくない。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

幼い子どものころであれば、何事も許してあげて、献身的に愛情を注ぐ気になれたかもしれないが、大きく成長した今となっては、つい常識的な考えになり、「いい加減にしろ」と思ってしまう。育て直しは、赤ん坊を育てるよりも、ずっと大変なのである。

 

それゆえ年齢が上がるほど、難しさが増す。さらに親自身が極度に不安定だったり、共感性が欠如していたり、本人に対して愛情がもてなかったりする場合には、かかわるとかえって本人が不安定になってしまうという場合もある。無理に関係修復を図るよりも、親とは距離をとっている方が安全が確保される場合もある。

 

しかしそうした場合も、愛着の課題を克服するためには、安全基地となる存在の媒介が、通常は不可欠である。親という本来の安全基地に代わる存在として、困ったときに駆け込める避難場所や、安心の拠り所を提供することで、本人の安定を図るとともに、本人が自分自身の課題に向き合うことを可能にする。

 

身近な他者──先輩や上司、恋人や友人、知人などが安全基地となって、その人の悩みや相談を受け止め、回復と安定に寄与していく場合もある。しかし、そこにはしばしば落とし穴もひそんでいる。最初のうちは親身に相談に乗ってくれていても、次第に負担になってきて態度が冷たくなり、最後には拒否されてしまうということも起きがちなことだからだ。そうすると本人はかえって傷ついてしまい、「信頼できる存在などいない」という思いを強くしてしまうこともある。

 

また、恋愛や交接が絡む場合には、性的に引きつけ合っている間は、優しくされることで関係が安定するが、その時期を過ぎてしまうと、とたんに関心が薄れ、関係もギクシャクし始めるということも多い。じつは愛着の課題は何ら乗り越えられないままに、ただ交接という麻薬によって、それを忘れていただけだったことが、後で明らかとなる。

 

カリスマ的な存在にマインドコントロールされる場合も、これによく似ている。幻の安全基地をそこに見て、自分を捧げることで、苦しさを麻痺させようとするのだが、主体性のない依存に陥るだけで、もっと危険である。

精神科医、作家

1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで困難な課題を抱えた若者に向かい合う。現在、岡田クリニック院長(枚方市)。大阪心理教育センター顧問。

著書に『愛着障害』『回避性愛着障害』『死に至る病』(以上、光文社新書)、『ストレスと適応障害』『発達障害と呼ばないで』(以上、幻冬舎新書)、『パーソナリティ障害』(PHP新書)、『母という病』(ポプラ社)、『夫婦という病』(河出書房新社)、『マインド・コントロール』(文藝春秋)など多数。

小笠原慧のペンネームで小説家としても活動し、『DZ』『風の音が聞こえませんか』(以上、角川文庫)、『あなたの人生、逆転させます』(新潮社)などの作品がある。

著者紹介

連載親子、友人…対人関係が上手くいかない人へ!「愛着障害」を克服する方法

愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる

愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる

岡田 尊司

光文社

幼いころに親との間で安定した愛着を築けないことで起こる愛着障害は、子どものときだけでなく大人になった後も、心身の不調や対人関係の困難、生きづらさとなってその人を苦しめ続ける。 本書では、愛着研究の第一人者であ…

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