算数が苦手な子ほど「解法を覚える」「量をこなす」といった学習法に頼りがちですが、算数の学習は「知識を身に付けたうえで、活用法を知る」ことが重要です。ここでは、超難関校の受験に頻出する単元の、効果的な学習法を解説します。※本連載は、中学受験専門塾ジーニアスの松本亘正氏と教誓健司氏の著書『合格する算数の授業 数の性質編』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

 

中学受験では、灘、開成、麻布といった超難関校ほど「数の性質」の単元が入試に多く出る傾向があります。この単元は、「わかる」と「正解する」のギャップが大きくなりやすいため、注意が必要です。難関校合格のために不可欠な単元の学習方法を紹介します。


教誓先生:読み方は「きょうせい せんせい」。名は体を表すのか、教えることが大好き。幼い頃から約数の多い数は「よい」数だと感じていたが、あまり共感を得られないらしい。出題者の意図をくんで解くことを心掛けている。

まなぶ君:算数は好きだけど、勉強は嫌いで、できればラクしたいと思っている小学5年生。6年生になったら中学受験をするので塾に通っている。たまにめんどくさがり屋の一面をのぞかせる。

 

教誓先生:最近の子どもたちは、『あつまれどうぶつの森』に夢中のようですね。

 

まなぶ君:先生、知っているんですね。ちなみに、先生は子どもの時、どんなゲームをしていたんですか?

 

教誓先生:もうだいぶ昔のことになりますが、『ドラゴンクエスト』という大変人気のあったゲームが好きでした。いわゆるロールプレイングゲームです。ドラクエと略されていましたね。

 

まなぶ君:ドラクエは今でも人気ありますよ!

 

教誓先生:そのようですね。私がよくプレイしたのは、ドラクエⅠからドラクエⅤです。

 

まなぶ君:Ⅴって、5のことですよね。どうして、Ⅴを5って読むのかなぁ。英語ですか?

 

教誓先生:これはローマ数字の5なのです。そうそう、ドラクエのようなゲームでは、「HP(ヒットポイント)」という体力を表す数値がありますよね。

 

まなぶ君:はい。0になると死んでしまいます…。

 

教誓先生:ファミコン版のドラクエⅠやドラクエⅡでは、敵のHPが255を超えることはなかったんです。まなぶ君、なぜだかわかりますか?

 

まなぶ君:え~…。ゲーマーじゃないからわかりません。

 

教誓先生:いやいや、これも算数の勉強ですよ。

 

まなぶ君:えっ!? じゃあ、もう少しヒントをください。

 

教誓先生:ドラクエⅢでは、HPが最大で1023のボスが登場しました。

 

まなぶ君:255と1023ですか…。難しいなぁ。共通点が見つかりません…。わかった! どちらも奇数だ!

 

教誓先生:まなぶ君の「何とか答えを出してみよう」という心構えは素晴らしいですね。では、もう1つヒントです。初期のドラクエでHPなどのステータスとして扱える値は、「0~255」や「0~1023」でした。

 

まなぶ君:…ということは、0から255では256通り、0から1023では1024通りの数字があるということか。1024は2を10回かけた数字だと聞いたことがあります。256は…、え~っと…2を8回かけた数です。

 

教誓先生:よくそこまで気がつきましたね! さて、今日の勉強は「N進法」というものです。コンピュータは、0か1だけの二進法で記述されているので、2通り、4通り、8通り、16通り、…といった2を何回かかけた数だけの表し方が可能となります。

 

255という数は、二進法の8桁(けた)で表される最大の数ですから、HPの上限になっていたんですね。勉強は意外なところで社会とつながっていることを、ぜひ知ってもらいたいのです。ゲーム好きなら、ただゲームをするだけではなく、こういった背景も知っておきたいですね。

普段使っている「アラビア数字」の考え方をおさらい

私たちが普段使っている「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9」といった数字は「アラビア数字」と呼ばれるものです。

 

アラビア数字との対比でよく使われるものに、「ローマ数字」というものがあります。時計の文字盤などで見かける「Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ,Ⅶ,Ⅷ,Ⅸ,Ⅹ」がローマ数字です。

 

『スターウォーズ エピソードⅣ』や『ドラゴンクエストⅤ』といったように、映画やゲームのシリーズをナンバリングする時によく使われていますね。

 

さて、アラビア数字を2つ並べて「23」と書いてあれば、私たちは「二十三」と読みます。そして、その数字を「10が2個、1が3個集まった数」だと考えます。どこにも、十と書かれていないのに、「2」を「10の位の2」だと思います。

 

また、「456」と書いてあれば、「四百五十六」と読んで「100が4個、10が5個、1が6個集まった数」だと考えますよね。どこにも百や十とは書かれていませんが、4は「100の位の4」、5は「10の位の5」だと思っていることになります。

7種類の記号で1~3999までの整数を表すローマ数字

ここでは、ローマ数字について話をします。

 

ローマ数字について理解することで、「10の位」や「100の位」といった考え方が、決して「当たり前ではない」ことを受け入れていってほしいのです。

 

ローマ数字では、次の7種類の記号を用いて、1から3999までの整数を表すことができます。次の記号は、それぞれ、1,5,10,50,100,500,1000を表しています。

 

 

ローマ数字はどんなルールで数を表している?

ローマ数字で1から20までを表したものが、次の表です。どのようなルールで数を表しているかを確認しましょう。自分でも、少し考えてみてくださいね。

 

 

ローマ数字では、小さい数を大きい数の左側に書くと引き算になり、小さい数を大きい数の右側に書くと足し算になります。

 

ただし、引き算する時には、「Ⅳ」は「5-1=4」や、「Ⅸ」は「10-1=9」というように、1つだけ引くことができます。そのため、「ⅡⅤ」で「5-2=3」とはできません。

「ローマ数字」を「アラビア数字」にしてみよう

1から20までのローマ数字で、足し算や引き算がどのように行われているかを式で表すと、次のようになります。

 

 

少し補足しておくと、時計の文字盤では慣例的に「4」は「IIII」と表します。理由は定かではありませんが、鏡越しに見ると「Ⅳ」と「Ⅵ」は判別が難しいので、このようにしたのかもしれませんね。

 

ここで知っておいてほしいのは、ローマ数字には「位」という考え方がないということです。数を表す時、「位」は必ずしも必要ではありません。また、「位」を用いるとしても、「1の位」の次が「10の位」である必要もありません。

 

 

松本 亘正
中学受験専門塾ジーニアス 代表

教誓 健司
中学受験専門塾ジーニアス 講師

 

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