年をとれば誰でも身体の自由がきかなくなり、生活するにも人の助けが必要になります。望んでひとり暮らしをする高齢者が増加する現代では、だれしも介護が必要になる前に、受けられる支援サービスなどを調べておくべきだといえます。今回は、シニア生活文化研究所・代表理事の小谷みどり氏の著書『ひとり終活』より一部を抜粋し、介護付き施設や支援サービスの選択肢について見ていきましょう。

 

特養に入所したい場合、市区町村の福祉担当窓口か、直接施設に申し込みますが、居住自治体以外の複数の施設に申し込むことも可能です。ただし入所定員が29人以下の地域密着型特養は、住民票がある自治体の施設でなければ申し込めません。また、同じ自治体が
管轄する特養でも、同一自治体内に特養があるとは限りません。たとえば新宿区では、管轄する特養は区内以外に、青梅市や福生市、立川市などにもあります。

 

特養は、入所者の健康状態が悪化しない限り、「終の住みか」として利用できます。ただ、医師が常駐している特養はほとんどなく、痰の吸引や胃ろう、経管栄養や在宅酸素療法などの医療ケアには対応できないことがあります。入所時にこうしたケアが必要な場合や3カ月以上入院して不在になった場合、退去しなくてはならないことが一般的です。

 

しかし2006(平成18)年4月の介護保険制度改正で、特養やグループホームなどで看取りをすれば、介護報酬に「看取り介護」を加算することができるようになり、最近では看取りを積極的におこなう施設が増えています。こうした施設では、認知症が進んで口からものを食べられなくなったときに胃ろうをするのか、呼吸停止後に心肺蘇生をするのかなど、入所者や家族の希望をあらかじめ把握します。

 

なお2015(平成27)年に介護報酬が改定され、看取り介護は、

 

①入所者本人やその家族が回復の見込みがないことを知っていること

②その後の療養や介護に関する方針で施設のスタッフらと合意していること

 

上記が条件に加えられました。特養やグループホームで看取り介護をしているといっても、本人が自分の状態を理解していないケースも少なくないのです。介護スタッフのなかには看取りをしたことがない人もいますので、果たしてちゃんと看取りができるのか、看取り介護には課題が山積しています。

 

一方、有料老人ホームは、元気な人が入居できるものと、前項で述べたように介護が必要な人が入居できるものがあります。同じ老人ホームという名称がついていますが、特別養護老人ホームと違い、有料老人ホームの場合、入所まで何年も待つということはまずありません。

 

また有料老人ホームは費用がかかるというイメージがありますが、最近では、特養同様、入居一時金を徴収しない施設が増え、毎月の負担金も特養と変わらない有料老人ホームが多くなってきています。

 

[図表1]介護付き住宅

 

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ひとり終活

ひとり終活

小谷 みどり

小学館

元気なうちは気兼ねの要らない自由な暮らしがいいと思っていても、ひとり暮らしの人は、将来に不安を感じることも多い。 介護が必要になったら誰が面倒を見てくれるのだろう? 万が一のとき誰にも気づいてもらえなかったら…

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