離婚時、慰謝料とともにトラブルに発展しやすい「子どもの親権」問題。今回は実例を基に、離婚時一度届け出た親権者を、あとから変更できるのか解説します。

 

しかし、上記の要素に加えて、親権者の変更を求める場合に、特に必要な要素として、

 

「先になされた親権者の指定後の事情の変更を要すべき」

 

という考え方もあります。

 

離婚時に親権者を指定した後で、特に事情の変更もないのに、法的地位の変動を認めることは法的安定性を害するし、離婚の際に親権者はある程度将来を予測して決定しているから、事情の変更は予測したものと異なる事情が新たに生じた場合であるというのがその理由です。

 

この考え方によれば、監護状態の優劣等だけを言っても足りず、離婚時からの事情の変更がなければ親権者の変更は認められない、ということになってしまいます。そうなると、親権者の変更を求める側には更に高いハードルが課されてしまうことになってしまいます。

 

裁判所がどのように考えているのか参考になるケースとして、福岡高等裁判所平成27年1月30日決定の事例があります。

 

これは、冒頭で紹介したケース(かなりデフォルメしています)と同じく、離婚後の母側の監護状態にはかなり問題があり父側から親権者の変更審判を求めたものでしたが、それでも家庭裁判所は、「事情の変更がない」として変更を認めませんでした。

 

しかし、高等裁判所は「事情の変更が必ずしも必要ではない」として、家庭裁判所の決定を覆して、父側に親権者の変更を認めました。福岡高裁は、事情の変更が必要かどうか、という点については、

 

「事情の変更が考慮要素とされるのは,そのような変更もないにもかかわらず親権者の変更を認めることは子の利益に反することがあり得るからであって,あくまで上記考慮要素の1つとして理解すべきであり,最終的には親権者の変更が子の利益のために必要といえるか否かによって決するべきである。

 

「そうすると,夫と妻の監護意思,監護能力,監護の安定性等を比較考慮」して「親権者を」決定「することが未成年者らの利益のために必要であると認められる」

 

と述べており、必ずしも事情の変更が必須ではないという考えに立っています。至極当然の判断のように思われますが、高等裁判所までもつれているという点で、やはり親権者の変更というのは判断の難しい問題であるということを感じさせるケースともいえます。

 

少し長いですが、親権者の変更を検討する方々の参考のために、福岡高裁の決定の抜粋を以下記します。

 

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