「抱っこせず見守る」赤ちゃんの夜泣き改善法…ママ医師も実践

巷にはたくさんの「子育て情報」があふれています。しかし、食事や遊びについての情報がたくさんある一方で、「睡眠」について知る機会は多くありません。赤ちゃんの「ねんね」はほとんどの親が困る問題ですが、信頼できる情報が見当たらずに諦めてしまう方が多いようです。睡眠の問題は「我慢で乗り切るもの」ではありません。科学的な根拠に基づき、寝かしつけを改善するポイントを解説。※本連載は、医師、Child Health Laboratory代表の森田麻里子氏の著書『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

NEW【最新セミナー】“医師専門”の資産形成コンサルによる
30代勤務医だけのための投資セミナー〜不動産投資〜

オンラインで配信します。詳細はこちら↑スマートウォッチがもらえます。

夜泣きは「両親の我慢で乗り切るもの」ではない

子どもの仕事は、食べる(飲む)こと、遊ぶこと、寝ること。何を食べさせるか、何を飲ませるか、どんな遊びをさせるかについては、さまざまな情報があります。

 

一方で、睡眠についてはどうでしょう。子どもをどのくらいの時間、どんな風に寝かせてあげればよいか、また安全な寝室環境の作り方について、知る機会はほとんどないと思います。

 

夜泣きや寝ぐずりなど睡眠のトラブルで困っているママ・パパは多いのに、あまり情報にふれる機会はありません。そして、ほとんど知識のないまま、子どもだから仕方ないと諦めてしまうようです。

 

睡眠のトラブルは、実は改善できるものも多いのですが、そのことは医療者や子どもの保育に関わるプロの間でもほとんど知られていないように感じます。

 

お子さんの夜泣きやぐずりで悩むママ・パパの中には、「ねんねトレーニング」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。以前の私も、息子の寝つきの悪さに途方に暮れ、ネットで検索してやっと行き着いたのがねんねトレーニングでした。

 

「赤ちゃんを泣かせっぱなしにする」というイメージから、否定的な意見を持つ方もいらっしゃるでしょう。もちろん、お子さんの睡眠でママ・パパに何も困っていることがない場合は、ねんねトレーニングをする必要はありません。

 

しかし、夜泣きや寝ぐずりを我慢だけで乗り切ろうとすると、気づかないうちにママ・パパの健康を害し、結果として赤ちゃん自身にも悪影響が及ぶことがあります。ママ・パパが寝かしつけに苦痛を感じていたり、睡眠不足でヘトヘトになっていたりするなら、それを改善できる方法を試してみてほしいと思うのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

「ねんねトレーニング」でママの産後うつリスクも減少

それでは、ねんねトレーニングとはいったいどのようなものなのでしょうか? 子どもの成長に悪影響はないのでしょうか?

 

ねんねトレーニングは、子どもが親の助けを借りず、1人で寝られるように教える方法です。やり方はさまざまですが、大まかには3つの方法に分けられます。

 

1つは、夜に子どもをベッドに寝かせたら、泣いたとしても、翌朝まで全く反応しない方法です。もう1つは、泣いたら部屋に入って声をかけるけれど、部屋に入る時間の間隔を徐々に広げていくという方法。3つ目は、子どもが寝つくまで同じ部屋にいて声をかけたりはするものの、だんだんと子どもから離れていき、最終的に部屋の外から声をかけるだけにするという方法です。

 

ねんねトレーニングの有効性は、複数の研究で証明されています※1。たとえば、2007年にオーストラリアの研究者が行った研究には、328組の母親とその赤ちゃんが参加しました。7ヵ月の時点で睡眠に問題を抱えていた赤ちゃんを2グループに分け、一方だけにねんねトレーニングを行ってもらいました。すると、1歳になった時点で睡眠に問題を抱えていた割合は、トレーニングを行っていないグループが55パーセントだったのに対し、トレーニングをしたグループでは39パーセントで、明らかに少なくなっていました。また、産後うつ病の検査に使われる質問票の点数も、トレーニングをしたグループのほうがいい、つまり産後うつ病の傾向が少ないことがわかりました。

 

2006年には、アメリカの研究者たちが、ねんねトレーニングについての医学論文をまとめて解析しました※2。内容を調べた52の研究論文のうち49の研究で、ねんねトレーニングは夜泣きや寝つきの悪さの改善に効果があったという結論が出ていました。効果があった割合は、平均で82%です。残り3つの研究でも、効果もなかったが、悪影響もなかったという結果になっていました。短期的・中期的には、ねんねトレーニングの効果はかなり強い科学的根拠があると考えてよさそうです。

 

さらにねんねトレーニングが長期的な悪影響を及ぼすかどうかについては、2012年に発表されたオーストラリアの論文が参考になります※3。生後7ヵ月の時点で睡眠に問題を抱えていた326人の赤ちゃんたちを、ねんねトレーニングを行うグループとそうでないグループに分け、その後5年間追跡しました。すると、どちらのグループでも子どもたちの問題行動やストレスレベルに差はなかった、つまりこの研究で調べた範囲では悪影響はなかったという結果になりました。

愛着障害になる?「泣いたら抱っこせよ」の科学的根拠

また、愛着形成を重視する立場から、「泣いたらすぐ抱っこ」しなければいけないと強調されることがあります。眠るときは泣いてもすぐ抱っこしないねんねトレーニングとは、完全に真逆の考え方に思えるかもしれません。これについては、どう考えたらいいでしょうか?

 

愛着とは、「人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形造っている」ものです※4

 

安定した愛着を形成している子は、自分は愛される価値のある人間であるとか、周りの人は信頼できるといったポジティブなものの見方を身につけ、大人になってからいい対人関係を築けるようになります。

 

逆に愛着形成が不安定だと、相手を信頼しにくく、上手に助けを求められなかったり、相手をコントロールしようとしたりする傾向があります。

 

安定した愛着を形成するためには、特に生後6ヵ月から1歳半頃までの時期に、特定の養育者が子どものニーズに適切に反応してあげることが大切です。ねんねトレーニングは子どもの泣きにあえて反応しないことがあるので、ねんねトレーニングが愛着形成を傷つけてしまうのではないかという疑問は、当然のものだと思います。

 

実は、この問題に答える研究も行われています。1つは、オランダの研究者が2000年に発表した論文があります※5。赤ちゃんがいる50の家庭を、生後3週間から9ヵ月まで3週間ごとに訪問して、泣きの様子や親の対応を観察しました。そして赤ちゃんが1歳3ヵ月になったときに愛着パターンを評価しました。すると、愛着形成が不安定なグループの中で回避型と呼ばれるタイプ(養育者にあまり愛着を示さず、無関心に振る舞い距離を置くタイプ)の子は、安定型の子よりも、泣いたときに親がすぐに反応してあやす傾向が強かったことがわかりました。

 

また、2009年にも同様のテーマの論文がアメリカから発表されています※6。この研究では、1歳の子ども44人を対象に、子どもが寝ているときの様子や親との関わりを3日間ビデオテープで撮影させてもらい、さらにその後の実験で子どもの愛着パターンを評価しました。すると、夜泣きに全く反応しない家庭とその他の家庭を比べても、子どもの愛着パターンに有意な差はありませんでした。また、泣いた時の親の対応に一貫性がない家庭の子は、不安定な愛着パターンを持つ傾向にありました。

 

これらの研究からは、夜泣きしたときすぐ抱き上げなくても愛着形成に問題はないことがわかります。むしろすぐに反応しすぎてしまうのはよくない可能性がありますが、これは親に余裕がなく、赤ちゃんの泣きに焦って対応しているからかもしれません。また、親の対応が毎回ばらばらであることも、不安定な愛着形成のリスクになる可能性があるようです。

 

そもそも、愛着形成とは夜中の対応の仕方だけで決まるものではなく、1日の生活全体を通して育まれるものです。夜中に親がさほど敏感に反応しなくても、日中に子どものニーズを汲み取って反応し、ある程度スキンシップを持てていればそれでいいのです。24時間赤ちゃんが泣いたらすぐかけつけることと引き換えに、親が睡眠不足になって、笑顔がなくなり、日中の関わりの質が低下するとしたら、それこそ本末転倒になってしまいます。

 

お子さんがぐっすり眠れるよう適切なサポートをすることは、お子さん自身にとっても、お母さんお父さんにとっても、必ずプラスになります。ねんねトレーニングは、効果と安全性が科学的に証明されている方法です。ご家庭の中でもぜひ活用していただきたいと思います。

 

【出典】

※1 Hiscock H, Bayer J, Gold L, Hampton A, Ukoumunne OC, Wake M. Improving infant sleep and maternal mental health: a cluster randomised trial. Arch Dis Child. 2007 Nov;92 (11):952-8.

 

※2 Mindell JA, Kuhn B, Lewin DS, Meltzer LJ, Sadeh A, American Academy of Sleep M. Behavioral treatment of bedtime problems and night wakings in infants and young children. Sleep. 2006;29 (10):1263-76.

 

※3 Price AM, Wake M, Ukoumunne OC, Hiscock H. Five-year follow-up of harms and benefits of behavioral infant sleep intervention: randomized trial. Pediatrics. 2012 Oct;130 (4):643-51.

 

※4 岡田尊司.愛着障害〜子ども時代を引きずる人々:光文社新書;2011.

 

※5 van IMH, Hubbard FO. Are infant crying and maternal responsiveness during the first year related to infant-mother attachment at 15 months? Attach Hum Dev. 2000;2 (3):371-91.

 

※6 Higley E, Dozier M. Nighttime maternal responsiveness and infant attachment at one year. Attach Hum Dev. 2009;11 (4):347-63.

 

 

 

書籍の詳細はこちら!
書籍の詳細はこちら!

 

森田 麻里子

医師

Child Health Laboratory 代表

 

【関連セミナー】

※【11/24開催】入居待ち500人以上「満室×高収益」賃貸経営のすべてを大公開!

 

※【11/26開催】不動産営業マン必見!業務効率「10倍」のアプリ「TRG(トラジ)」

 

※【12/5開催】勤務医のための「キャリア&資産形成」戦略セミナー

 

※【12/5開催】入居率99%がずっと続く「驚愕&堅実のアパート経営」の秘密を大公開!

 

※【12/8開催】「日本一富裕層に詳しい税理士」による富裕層の節税対策・資産運用法

 

※【随時】30代・40代から始める不動産を活用した資産形成勉強会

 

※【勤務医限定】「良いニュース」と「悪いニュース」

医師
Child Health Laboratory 代表
昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター 非常勤医師
 

1987年、東京都生まれ。2012年、東京大学医学部医学科卒業。

自身が子どもの夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究のリサーチを始め、赤ちゃんの健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。

著者紹介

連載東大医学部卒のママ医師が解説!科学的に正しい子育て

東大医学部卒ママ医師が伝える 科学的に正しい子育て

東大医学部卒ママ医師が伝える 科学的に正しい子育て

森田 麻里子

光文社

東京大学医学部卒、ママとしても奮闘中の医師が、世界の最新研究をリサーチして生まれた「使える」育児書。 「妊娠中は結局何を食べればいい?」 「哺乳瓶は消毒しないといけない?」 「子どもの睡眠時間はどのくらい必要…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧