
病身の父親を気にかけている20代の兄弟。彼らの父親は重い病気を患って会社を退職し、現在は祖父の不動産収入と夫婦の年金で生活しています。しかしある日、高齢の祖父が倒れたことで、過去の問題が再燃。不仲で音信不通だった叔父と倒れた祖父を再会させるも、叔父が興味を示したのは相続財産だけで…。※本記事は、株式会社トータルエージェントが運営するウェブサイト「不動産・相続お悩み相談室」から抜粋・再編集したものです。
祖父母を支えてきた父親は、重い病気を患い…
同じ両親に同じように育てられても、きょうだいそれぞれ性格が大きく違うということは、珍しくありません。親の立場であれ、子どもの立場であれ、心当たりのある人もいるでしょう。また、幼い間はきょうだいげんかが多くても、成長するにしたがって落ち着き、大人になれば普通にいい関係を築いている、そんなきょうだいも多いものです。
とはいえ、なにかをきっかけに亀裂が入り、修復不能になってしまうケースもあります。今回ご紹介するのは、長年音信不通だった弟が、父親が亡くなり相続が発生したことをきっかけに実家に戻り、家族間にトラブルが起こった事例です。
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安藤さんの家族は、安藤さんの両親と祖父、そして安藤さんの兄の5人家族です。祖母は5年前に他界しています。
安藤さんと安藤さんの兄はともに20代後半で、大学を卒業後、一般企業に就職。現在はそれぞれ実家から車で30分程度の場所にアパートを借り、ひとり暮らしをしています。週末にはしばしば実家に顔を出し、家族と食事を共にするなど、関係は良好です。
安藤さんの両親は60歳になったばかりですが、父親は一昨年、勤め先の定期健診で大病が判明し、緊急入院。そのせいで定年まであと少しのタイミングで退職することになりました。現在は自宅でゆっくり過ごしつつ、体調がいいときは、祖父の畑仕事を少し手伝っています。
安藤さんの実家の主な収入源は、両親と祖父の年金、そして祖父が所有する駅前のアパートです。アパートは1Kの単身用で、そこまで高い収益は見込めませんが、常に満室状態です。母親は結婚以降ずっと専業主婦で、祖父と父親の世話をしています。

祖父の余命を思い、父は音信不通の叔父に連絡
ある日、80代の祖父が畑仕事をしている最中に脳梗塞の発作を起こし、倒れてしまいました。幸い命に別状はなく、しばらくの入院とリハビリで、自宅に戻ることができました。
しかし、体にまひが残ったため、これまでのように農作業ができなくなるのはもちろん、日常生活にも介助が必要です。安藤さんの母親は、父親の面倒だけでなく、祖父の介護も行うことになりました。心配した安藤さんと安藤さんの兄は、頻繁に実家を訪れています。
じつは、安藤さんの父親には弟がひとりいます。安藤さんはこの叔父に会ったことがありません。なぜなら叔父は、若いころから素行不良で家に寄り付かず、20歳になる前に家を飛び出し、その後はほぼ没交渉だからです。安藤さんの父親は叔父の住所等は知っているものの、双方とも連絡を取ることはなかったといいます。
しかし祖父が倒れたことで、叔父に状況を伝える必要があると思った安藤さんの父親は、手紙を書きました。
ある土曜日、祖父の定期検診に付き添っていた安藤さんと母親が、車で自宅に戻ってきたところ、激しくどなり合う声が聞こえてきました。驚いて家に入ると、そこには父親と、見たことのない中年男性が立っていました。
「お父さん!」
安藤さんの大声で、2人は振り向きました。2人ともよく似た面差しで、叔父であることはすぐにわかりました。