2018年に社会問題となった、新築シェアハウス“かぼちゃの馬車"破綻事件以降、不動産投資へのネガティブなイメージが広がっています。しかし、ある一定の条件を揃えることで、収益不動産を活用した資産形成は実現できます。ここでは、だれも気づかなかった投資用不動産物件の評価基準について詳述します。※本記事は『新富裕層のための戦略的不動産投資』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

時代とともに移り行く「銀行評価」の内容

ここからは銀行評価について掘り下げていきます。今でこそ「収益還元評価」や「積算評価」という言葉も一般的になっていますが、こうした評価方法が根付いたのはわりと最近の話です。

 

新卒で金融機関に入社した私は、それこそ業務として「物件評価」を行っていました。やがて不動産業界に転職をしますが、時とともにその評価方法は形を変えていきます。だからこそ、私は今の時代の「評価基準」も今後変わっていくのではないかと予測しているのです。

 

 【バブル期】取引事例比較法 

 

バブル期に金融機関に勤めていた私が最初に教わったのは、取引事例比較法と呼ばれるものでした。当時、銀行でも一般的だった取引事例比較法とは、多数の不動産の取引事例をベースにして、対象となる不動産価格を求める手法です。

 

例えば、「査定しているAという土地」と「Aと条件が近い過去に取引されたBという土地」があるとしましょう。このとき、Aの路線価が坪60万円で、Bが路線価50万円で坪100万円で売買された事例がある場合、「60:X=50:100」という計算式でAの時価評価を算出することができます。

 

路線価とは、相続税の算出のために各道路につけられた価格のことで、「路線価50万円」のとき、その道路に接している土地の相続税算出のための資産としての価値は1㎡あたり50万円とみなされます。この計算式を解くためには、「内項の積=外項の積」になりますので、今回の場合だと外項の積が「6000」、内項の積が「50X」となり、この一次方程式を解くと「X=120」、つまりAの評価は120万円ということになります。

 

取引事例比較法は、おそらく公的・第三者的な評価で恣意性が配慮された路線価を用いており、計算もロジカルで説得力もあるということでバブル期に大いに使われていました。さらに当時は、金融機関がお金を貸したい時代であり、実際相場も上がっていたため、「時点修正」を加えました。

 

時点修正とは、例えば「1年前と比較すると現在の地価は20%上昇している。よって、物件売却時となる1年後の評価は1・2倍にする」というものです。

 

しかし、去年2割上昇したから今年も来年も同じように2割上がるかというと、もちろんそんなことはありません。つまり、時点修正とはある意味で〝まやかし〟のようなものであり、まさに「このまま不動産価格は上がり続ける」というバブル時代の産物ともいえるわけです。

 

当時は、「10億円の取引事例があるけど、この1年間で2割上がっているから、来年の今頃には放っておいても12億円になっているだろう。黙っていても2億円儲かるわけだから転売だけで事業になる」と考え、実際にビジネスをしていた人が多くいました。いわば〝買ったもん勝ち〟な時代であり、今考えると非常に恐ろしいことを疑いなくやっていたわけです。

 

さらに恐ろしいという意味では、路線価は土地の収益性や換金性を考慮しているわけではなく、相続税を算出するために存在しているので、本来なら収益性や賃貸需要がない土地であっても、机上価値として価格がついてしまうのです。

 

そのため、取引事例比較法においては「すべての土地には価値がある」ということになり、その考え方で融資を次々としていくと、収益性のない土地も含まれてしまうため、非常に大きなリスクが伴いました。

 

そうしたバブル時代の反省もあり、融資対象、投資対象となる不動産にとって大切なのは「収益性」となって収益還元法が生まれたのだと思います。その後、「一時的な収益ではなく、本質的価値を評価することが必要である」ということで積算法も取り入れて立体的に評価されるようになりました。

 

このように、不動産評価といっても30年のなかでこれだけ変化してきているわけです。評価の方法は時代のなかで変わっていくものなので、今後も変わる可能性は大いにあり得ます。

 

ここで強調しておきたいのは、「土地を見るときは普遍的価値の見方を確立しておくことが必要」ということです。銀行の評価が出るから、利回りが高いからというのは、本来的な意味での土地の評価ではありません。

 

普遍的価値といっても、難しいことではありません。例えば、前面道路がある程度の広さがある(道路付けがいい)とか、土地の形が整形地である、周辺環境が良好である、というのは重要な価値ですし、逆に、土地の形が歪んでいるとか、海抜が低い、地盤が緩い、などがマイナス要素といえます。

 

バブル期には数多くの不動産会社が消えていきました。都心で活躍していたバブル王のような投資家も、土地の値上がりを前提としており、売却益がないと潰れてしまうというスタイルだったので、土地神話の崩壊とともに消えていきました。

 

では、破たんしなかったのはどのような人・会社かというと、融資を受けずに現金で事業をしていた、もしくは調達コストが限りなくゼロだったケースです。例えば、森ビルは地権者と共同でビルを建てたことで土地の調達コストを削減したため、バブル崩壊後も勝ち残ることができました。逆に、借金をして買いすすめた不動産業者はどこも失敗しました。

 

そのように企業が潰れていった結果、不良債権が次々と出てくるようになりました。その処理のために、都市銀行は再編をせざるを得ない状況に陥りました。

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新富裕層のための戦略的不動産投資

新富裕層のための戦略的不動産投資

杉山 浩一

幻冬舎

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