個人が所有不動産を売却する際には、売却(譲渡)益に対して譲渡所得税が課されます。その計算過程においては、不動産をどのように取得したのかという背景や、売却する理由などを考慮して、税金計算における特例規定が設けられています。今回は、税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏が「所有期間」に着目して、個人が不動産を売却した場合に受けられる特例規定を整理していきます。※各規程における税務上の「所有期間」とは、不動産を売却した年の1月1日現在までの経過年であり、売却時点までの経過年ではありません。以下の「所有期間」は全て税務上の所有期間によって判断することに注意してください。

所有期間に関係なく適用される特例

③マイホームを売った時の3,000万円の特別控除

マイホームを売って売却益が出た場合、所有期間(長期・短期)に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。

 

④相続により取得した不動産を売却した時の特例

(イ)相続財産を譲渡した場合の取得費加算

相続により不動産を取得してから、3年10ヵ月以内にその不動産を売却した場合、相続税の一部を「取得費」に加算して譲渡所得を計算することができます。
譲渡所得=収入金額-(取得費+取得費に加算する相続税額+譲渡費用)

 

 

(ロ)相続により取得した空き家の3,000万円特別控除

相続により不動産を取得してから、3年10ヵ月以内にその不動産を売却した場合、相続税の一部を「取得費」に加算して譲渡所得を計算することができます。
譲渡所得=収入金額-(取得費+取得費に加算する相続税額+譲渡費用)

 

 

⑤収用等の特例

(イ)収用等に伴い不動産を売却した時の5,000万円の特別控除
土地収用法等の規定により不動産を売却して対価補償金を取得した場合に、売却益から最高5,000万円を控除する規定です。
買取りの申し出があった日から6か月を経過した日までに売却することが要件となっています。

 

(ロ)収用等に伴い不動産を買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例
対価補償金等(売却額)より買換え不動産の取得額が大きい時には課税が繰り延べられ、対価補償金(売却額)より買換え不動産の取得額が小さい時には、その差額を収入(売却益)として譲渡所得を計算する規定です。

 

収用等のあった日から、原則として2年以内に代替資産を取得する必要があります。

 

以上の規定は個々に適用要件や適用時期が細かく決められており、重複適用ができるものとできないものがあります。また、どの規定を選択すれば有利なのか、検討が必要な場合もあります。

 

さらに、確定申告が要件の一つとなっており、原則として売却した年の翌年の3月15日までに売却の内容を申告しなければなりません。本年中に個人で不動産を売却された方、これから売却する予定の方は、資料の整理など余裕をもって行い、必要な場合は税理士等専門家に相談されると良いでしょう。

 

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