10時から「お茶の時間」がある本当の理由
高齢者の場合、廃用性症候群と呼ばれる病気のようなものがあります。つまり、何もしないで居室に一人で閉じこもりベッドの上に長くいると、筋力が衰えることはもとより、気分も落ち込み、うつ状態になって何もしたくなくなり、最終的には寝たきりになってしまうというものです。老人ホームとしては、廃用性症候群は何としてでも防ぎたい。というよりも、自宅にいるのであればいざ知らず、老人ホームに入居をしていて廃用性症候群になったなどとは、みっともなくて世間に言えない、という気持ちがあります。
さらに、厄介なことは、活動的な入居者ばかりではない老人ホームの場合、ホーム側があの手、この手を使って、居室の外に入居者を連れ出したい、という意図もあります。それゆえに毎日「10時になったらホールでみんなでお茶を飲む」ということを、半ば義務化しているのです。もちろん、水分補給(水分管理)などの役割もありますが。
老人ホームの入居者を見ていると、言われなくても10時前にホールで待っている人、職員から促されて素直にホールに出てくる人、職員に促されてもホールに出てくることを拒む人の3パターンに分かれます。言われなくてもホールに出てくる場合、自分の行動パターンに規則性があります。ホーム側の都合で、インフルエンザが蔓延して10時のお茶の時間を中止する事態になった場合などは、何で10時のお茶の時間がないんだと大騒ぎになります。
職員に促されれば、何でもハイ、ハイと言って従ってくれる場合は、職員にとっては扱いやすい入居者ということになります。職員に促されても出てきてくれない入居者には、手を焼きます。自暴自棄になって、自分なんてどうなっても良いので放っておいてほしい、などと言われると、勝手にすればよいと匙を投げる職員や、何が何でもホールに出してお茶を飲ませてやるとファイトが出てくる職員に分かれます。いずれにしても、老人ホームでは、この10時のお茶の時間は、吉本新喜劇のような「お約束」があちらこちらで毎日繰り広げられながら、お昼ご飯の時間になだれ込んでいくのです。
お茶の時間があるのは、なぜでしょうか
もう一つ、お茶の時間を用意している理由があります。それは入居者の居室の清掃です。
入居者がホールに出ている時間に居室の整備、清掃をやり、健康を害するような原因がないかを確認します。ゴミ箱やトイレの使用状況は要注意。人によっては、タンスやクローゼットの中にさまざまなものを隠し持っている(収集している)入居者もいるので、職員が家族や本人の同意の下、定期的に確認します。清掃の重要性を説明して理解をしてくれる入居者に対しては、入居者が居室にいようといなかろうとかまいませんが、清掃の必要性を理解できない入居者の場合、鬼のいない間の何とかではありませんが、ホールに出ているうちに職員が一気に清掃をやってしまいます。
小嶋 勝利
株式会社ASFONTRUSTNETWORK常務取締役
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