※本記事は、株式会社福田財産コンサルの福田郁雄氏、木村祐司税理士事務所の木村祐司税理士の共著書『余命一カ月の相続税対策』(幻冬舎MC)の一部抜粋です。書籍は2015年刊行であり、現在の税制とは異なる点があります。あくまで過去に起きた相続トラブルの一例としてお読みください。

余命宣告の2週間後にはなんと…

こうして、約4億円の賃貸マンションの売買契約を余命宣告の2週間後に完了し、手付金1000万円を振り込みました。残りの代金は、銀行から全額ローンを借り入れることにしました。この賃貸マンションの銀行による担保評価は約2億円だったので、もともと相続時に売却しようと思っていた市街化区域内農地に別件担保を付けて融資を受けることにしたのです。

 

融資の審査にはさらに2週間ほどかかる見込みでしたが、賃貸マンションの売買契約に「ローン特約」を付けることは控えました。「ローン特約」とは、万が一、予定していたローンが借りられなかった場合、白紙解約になるという条項です。

 

買い主にとってはリスクを避けられるというメリットがありますが、相続対策で賃貸マンションを購入する場合、「ローン特約」が付いていると契約がまだ成立していないと税務署から見なされる可能性があります。もし、ローンの承認が下りる前に相続が発生すれば、せっかくの節税対策は無意味になってしまいます。

 

そこでCさんのお父さんには、「ローン特約」を付けず、万が一、融資額が削られたら土地を売って自己資金を出してもらう予定で売買契約を結んでもらいました。その結果、決済が終わっていなくても、契約時点で賃貸マンションの所有権はCさんのお父さんに移り、即、相続税評価額が下がりました。

 

決済と所有権移転登記が終わらないと、相続税評価額が本当に落ちるのか心配される方もいます。決済前に亡くなってしまったらどうしようと心配されるのです。しかし、心配はいりません。契約が完結しているのなら大丈夫です。

 

資産は購入契約の締結時に買い主に移転し、決済の残金は売り主に対する負債となるからです。これはいろいろなケースの判例から見ても支持された考え方です。

 

Cさんのお父さんの場合、建物については相続税評価額(固定資産税評価額に同じ)が時価より3割ほど低く、土地については路線価による評価からさらに貸家建付地と小規模宅地等の特例により評価額が下がり、計算したところ約1億円の相続税評価となりました。購入価格の4億円と比べ、約3億円評価が落ちたことになります。

 

こうして、8億円の相続税評価額が5億円になりました。相続税額は総額で1億3000万円となり、対策前の半額です。見方を変えれば、4億円の不動産を1億3000万円値引きして買ったのと同じといえます。さらに、配偶者控除をフルに使うと相続税額は6500万円にまで下がります。相続税は累進課税なので、評価額の減額以上に税額が下がるのです。

 

今後、購入した賃貸マンションの価値が下がったとしても、こうした節税効果の分ほど下がることはないでしょう。年間3000万円の家賃収入があり、経費は600万円なので、手取りで2400万円の収入となります。ローンの返済が年間2000万円なので多少の空室リスクにも対応できます。手元にお金はさほど残りませんが、ローンの元金が毎月減っていくので、純資産価格は増えていきます。

 

資産家にとっての本当の利益は、毎年のキャッシュフローを増やすことではなく、あくまでバランスシート上の純資産が増加することです。

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