「社長の教祖」と異名を持つ一倉定氏は経営者をよく叱った。叱られるたびに多くの経営者は目を輝かせた。社長の教祖は「世の中に、良い会社とか悪い会社なんてない。あるのは良い社長か悪い社長だけである。会社は社長次第でどうにでもなるんだ」と断言したという。なぜ、令和の時代に「一倉定」が注目されるのか。本連載は作間信司著『伝説の経営コンサルタント 一倉定の社長学』(プレジデント社)からの抜粋です。

銀行の支店長も驚く「経営計画発表会」の

いよいよ我社にとっての「第1回経営計画発表会」になる。しかし、その前に試練がもう1つ。はじめて「経営計画書」を作成したあと、合宿終了後に「チェックの会」という一倉先生との個別面談があり、初年兵社長たちは特に緊張した面持ちで内容の最終確認をしてもらうのである。

 

作間信司著『一倉定の社長学』(プレジデント社)
作間信司著『一倉定の社長学』(プレジデント社)

はじめての「経営計画書」の特徴は大きく2つ。1つは、現場の実態をよくつかんでいないため、先輩方の計画書を参考に「どの会社でも通用するような一般論、べき論」が並んでいること。もう1つは、思い入れはよくわかるが、「あれも大事、これも大事で紙数が溢れ100ページ以上になる超大作」の経営計画書になってしまうケースである。

 

こんなとき、一倉先生はニヤニヤしながら、「社長!誰がこんなにたくさんのことをできるんですか?講義であれほど重点主義について話しているのに」「経営計画ももっと重点主義で進めないと」と言って半分呆れたような、でも半分嬉しそうにアドバイスしておられた。

 

そして、発表会を3~5年と続けるうちに、「自社独自の計画書にしていきなさい」「とにかく発表会を開催し続けることが一番大切ですから」と言っておられた。

 

「チェックの会」の個別面談の会場前で詰めていると、「これはヤバイ!カミナリが……」と思いきや、先ほどのようなニヤニヤも多く、途中から「一生懸命やっていての内容の良し悪しには寛大で」「できることを怠慢、手抜きで……」のときにヤバイ状況になると想像がつくようになってきた。

 

発表会では、新たな「経営計画書」の一言一句を社長が独演会で読み上げ、質問は禁止というスタイル。そして、ゲストに金融機関の支店長もしくは本店の役員を招かれること、合宿でお世話になった先輩経営者、同期の社長を招いて激励のスピーチ、祝辞をお願いしておくことなどの要所を押さえホテルにて開催に臨まれていたのである。

 

緊張のうちに発表会が終わると、全社員が一堂に会し、食事会、懇親会となって明日からの実践を誓うわけだが、今でも共通する一言が銀行関係者から聞かれる。

 

「いや~、はじめてこんな『経営計画発表会』に招かれ驚きました」、それも「失礼ながら大手でもないのに」と、我々サイドには本音を漏らしてくれる。毎年発表会を開催している会社でも、「前任の支店長から申し送りを受けており、実は楽しみにしていたんですよ。私が一番勉強になりました」という声も多いのが実際である。

 

社員が1つの方向に向かって、具体行動でやることを明示され、1年後には損益計算書(PL)がこうなり、貸借対照表(BS)を目標数値で示されていることはまれである。金融機関の信頼を得て、協力関係がより強固になっていく姿は今も昔も全く変わらない。

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