夕方のスーパーで、大幅値下げをしているお惣菜をみて、嬉しい反面、「こんなに割引して、スーパーはやっていけるのかしら」と心配したことはないでしょうか。そこには店の利益を最大化する戦略が隠されています。今回は、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「価格差別化」を用いた経営戦略に焦点をあてて解説していきます。

 

C型肝炎の治療薬のハーボニー配合錠は95~100%の確率でC型肝炎ウイルスを排除できる画期的な薬剤で、発売時には1錠80171.30円もしましたが、2016年4月か54796.90円へ価格が引き下げられました。医療費助成制度が適用されるため、もともと価格弾力性は低いものの、やや低価格になったことで、使ってみようという医師や患者が増えるので、結果的には価格差別化戦略になって総売り上げが上がるかもしれません。

 

◆人間は常に経済的に合理的か?

「人は利益の最大化を目指して合理的な行動をする」が近代経済学の前提でしたが、常に当てはまるでしょうか? 子供が熱を出した時、救急車を呼べば無料なのに、なぜ自家用車に乗せていくのでしょうか? 経済的合理性では説明のつかない行動です。

すぐもらえる50万円と、1/2の確率でもらえる100万円

まずは次のケースを考えてみて下さい。

 

[図表1]AとB、どちらを選びますか?

 

A:いますぐもらえる50万円
B:1/2の確率でもらえる100万円の場合

 

多くの人が確実にもらえるAを選ぶと思います。期待値はどちらも50万円なので本来は等価なはずですが、人間の行動は異なります。このように人は経済的には合理的でない行動をとることがあります。これを人の限定合理性と呼びます。

 

A案を選ぶ人はリスク回避的といいます。逆にB案を選ぶ人はリスク選考的といえます。人は100%確実である性それでは次のケースを見て下さい。確実にもらえる金額がいくらならAかBのいずれかが当たるくじを引いてもよいと思いますか?

 

[図表2]確実に貰える金額が?円だった場合

 

この?円と、くじと確実性同値の金額である50万円との差額(50万円−?円)をリスクプレミアムといいます。

 

このように人は必ずしも経済的に合理的ではないことがわかります。非合理的行動や、人間の認知や心理的バイアスがいかに経済行動に影響を与えるかについて、心理学と経済学を融合させたものが行動経済学です(依田高典、後藤励、西村周三著『行動健康経済学|人はなぜ判断を誤るのか』日本評論社)。

 

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MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

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角田 圭雄

幻冬舎メディアコンサルティング

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