夫と妻の意見が対立。結局、離婚で支払った額は…?
<争点(見解の違い)>
夫:土地はA(父)の好意で利用できている。利用権限の取得は夫婦の協力によるものではない。土地の利用権原は分与対象財産に含まれない。分与額は1500万円である。
妻:土地の利用権原も分与対象財産に含まれる。土地の利用権原の価値は更地評価額の20%相当の2400万円である。分与額は3900万円である。
<結論>裁判上の和解成立
離婚する。実質的に土地の利用権原(相当額)の一部を分与対象財産に含める。夫が妻に2700万円を支払う。
<合意成立のポイント>
1 敷地利用権の扱い
Aから夫への土地の貸与の時期が婚姻直後であったことから、Aが「夫婦の両方に対して」利益を提供したといえる状況でした。そこで裁判所は、敷地利用権は実質的な夫婦共有財産であるということを前提として、「夫が妻に1500万円を支払い離婚を成立させる」という内容の和解を勧告しました。最終的に、ほとんどこのとおりの内容での和解が成立しました。夫名義の金融資産(夫婦共有財産)の半額(1500万円)よりも1200万円が上乗せされたことになります。
2 収入の差に対する配慮
妻は婚姻する前は900万円の収入を得ていましたが、婚姻を機に退職しました。一方夫は、食品製造業の経営を行っており、婚姻中に規模を大きく拡大し、夫自身の年収は2500万円に達していました。このように、夫と妻の稼働能力に大きな差が生じていたため、裁判所はこのアンバランスを是正する趣旨も含めて勧告案を考えたようにも思われます。
三平 聡史
弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所 代表弁護士
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