新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

住宅型有料老人ホームが大量供給の舞台裏

しかしです。民間業者を甘く見てはいけません。彼らも生き残りをかけて必死になって食らいついてきます。住宅型有料老人ホームへシフトした多くの老人ホーム事業者の考えたことは、住宅型有料老人ホームという箱を造り、その箱で事実上、介護付き有料老人ホームの運営をすれば収入は変わらないはずだ、むしろ報酬単価が高い分、売上は増えるのでは?ということに気がついたのです。

 

大筋の仕組みはこうです。住宅型有料老人ホームの入居者に対し、「あなたが行使できる介護保険サービス(区分限度額と言います)の毎月の上限まで無条件で当該ホームから介護保険サービスの提供を受けてください。これが当ホームへの入居の条件です」と、やるのです。平たく言うと、「入居したければ、あなたが持っている区分限度額を100%当該ホームが提供する介護保険サービスで使いなさい」ということです。これにより要介護2の人が入居すると、半ば自動的に20万円以上の介護保険報酬を老人ホームは保険者に請求することができるのです。これで事業者が受け取れる報酬額は、介護付き有料老人ホームと同じか、それ以上になります。介護付き有料老人ホームの新規設置を止めて介護保険報酬負担の膨張を防ごうとした保険者の目論見は、これをもって見事に台無しになってしまったということになります。

 

これが介護付き有料老人ホームに総量規制がかかり、その代用品として住宅型有料老人ホームが大量に供給された裏の事情です。そして、このスキームで今に至っています。老人ホームの大倒産時代が到来するということは、次の理由によって説明がつきます。住宅型有料老人ホームが要介護入居者の区分限度額を100%使い切るには、ケアマネジャーによるケアプランが必要です。当然ですが、ケアマネジャーは入居者の状態を考え、状態に即した介護支援サービスをケアプランに明示し提案します。ちなみに現在では、国の指導もあり、足し算のケアプランではなく引き算のケアプランが主流になっていて、「できることはなるべくご自分で」というケアプランを作らなければなりません。俗に言う自立支援のケアプランです。

 

わかりやすく言いますと、要介護2のAさんは「20万円分の介護保険サービスを使う権利を持っていますが、10万円程度の行使に留めておきなさい」ということです。そのために都合よく出てきたキーワードが「自立支援」です。古くから介護業界にあった「自分のできることは自分でやることが一番良いことである」という精神を持ち出し、ケアプランを削っていこうという作戦です。

 

過剰な介護支援は本人のためにはならない、むしろ悪であるという概念を持ち出し、この概念を正当化するためにケアプランの成果を測定していくことになっています。「あなたが作成したケアプランで、利用者はどのくらい状態の改善がありましたか?」という、まるで医療の世界と同じ理屈を求めているのです。

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