新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

世田谷区の土地を探せと業者が殺到した

当時、私は老人ホームの新規開発の責任者だったので、毎日のように都道府県や市区町村に新しい老人ホームの新設相談に日参していました。そこでのやり取りは、区や市が設置を認めるのであればかまわないと都道府県から言われ、その見解を持って市区町村に行くと、都道府県がかまわないのであればわれわれは従いますというものでした。毎日、都道府県と市区町村とを行ったり来たりで「埒が明かない」という状況が続いたと記憶しています。

 

小嶋勝利著『もはや老人はいらない』(ビジネス社)
小嶋勝利著『もはや老人はいらない』(ビジネス社)

国の設置に対する方針がよくわからないという状況がしばらく続いたため、都道府県も市区町村も困惑していたのです。ちなみに東京圏の場合、世田谷区だけは最後の最後まで自分たちの判断で、かなりの量の介護付き有料老人ホームの設置を認めていました。国や都などの意向は関係ない。世田谷区として区民に必要なものは造るという力強い方針だったと思います。

 

われわれ事業者も「今、老人ホームの新設を認めるのは世田谷区だけだから、世田谷区内に老人ホームを造れ! 世田谷区内の土地を探せ!」と社内に檄を飛ばしていました。とはいえ新規設置ができなければ、多くの老人ホーム事業者は倒産してしまいます。売上拡大ができないのですから。

 

そこで、多くの事業者が苦肉の策として取り組んだスキームが住宅型有料老人ホームの設置なのです。当時、住宅型有料老人ホームは介護付き有料老人ホームと違い、総量規制の対象外だったので、どこの行政区でも自由に建設することができました。したがって多くの事業者が、生き残りをかけて介護付き有料老人ホームから住宅型有料老人ホームへシフトしたのです。結果、今では大量の住宅型有料老人ホームが供給されています。現在多くの課題や問題を抱えているサ高住は、この住宅型老人ホームの代替品として登場しているもので、同じことを何度も繰り返している、実に馬鹿げた話です。

 

本題に入ります。なぜ住宅型有料老人ホームは総量規制の対象にはならなかったのでしょうか?

 

それは、介護保険報酬の取り方に違いがあるからです。住宅型有料老人ホームとは、建前上は介護サービスについては一般住宅と同じです。前にも記しましたが、介護付き有料老人ホームに要介護2の人が入居すれば、定額の月額報酬を事業者に支払わなければなりません。しかし住宅型有料老人ホームは介護サービスを提供したら、提供した分だけを事業者に支払えばよい仕組みになっています。簡単に言いますと、要介護2の入居者が老人ホームに入居した場合、介護付き有料老人ホームでは事業者に対し介護報酬として20万円を毎月固定で支払わなければなりませんが、住宅型有料老人ホームの場合は、入居者に対し「入浴介助を今月は8回実施したので5万円支払います」といった話でよいということです。

 

つまり一般住宅と同じ扱いなので、入居しただけで無条件で20万円の定額報酬を支払う必要はないため、総量規制をかける必要もないという理解でした。なお多くの保険者(行政)の机上の空論では、住宅型有料老人ホームの場合、自宅に住んでいるのと同じスキームなので、入居者1人に対し提供される介護サービスの額は毎月、区分限度額の50%程度ではないだろうかと甘く積算していたと思います。

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