白内障とは、加齢によって目の中でカメラのレンズのような役割を担う水晶体が白く濁り、視力が低下する病気です。60代で約半数、80代に至ってはほぼ全員が、程度の差こそあれ白内障にかかります。高齢化に伴い、今や「目の国民病」と言っても過言ではないこの病気について、眼科専門医が症状と治療法を平易に解説します。※本記事は『図解 白内障かなと思ったら読む本』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

ポイント2:眼内レンズの選択肢が多いか?

ここでいう「選択肢が多い」とは、患者さんが自由に選べる、というニュアンスとはちょっと違います。患者さん一人ひとりに適したレンズを、多くの種類の中から選び出せる、といった医師側の選択肢ととらえてください。

 

医院によって、どのレンズをどのくらい使い慣れているか、つまり患者さんの眼の状態に合わせて適切に入れ、狙ったとおりの視力が出せているかは、実はまちまちです。特に、多焦点眼内レンズは左右のバランスも含め、的確に選んでいかないと、患者さんは見え方に満足いかないことが多いのです。単焦点眼内レンズはその点、ピントが合う距離は一つに決まっていて、その距離以外は眼鏡で調整が必要というのは分かっていますので、そう不満になることもないのですが、多焦点眼内レンズではより高精度なピント合わせが望まれますので、レンズ選びが難しいのです。

 

いかに的確なレンズを選べるかは、検査の正確さに加え、医師の経験とそれに基づいたセンスがものをいいます。多焦点眼内レンズは日本ではここ20年ほどの間に使われだしてきたので、ベテラン医師といえどもそれ以前の、単焦点眼内レンズしかなかった時代のやり方にしか慣れていなければ、適切な多焦点眼内レンズを選べるとは言えないでしょう。

 

もっと問題なのは、眼内レンズ=遠くを見えるようにする(近視を解消する)レンズと、はなから決めている医院も散見されることです。近くを見るときには眼鏡をかけてください、というわけです。

 

しかし患者さんの中には、仕事や生活スタイルによって、近くがよく見えている方が合っている、という人も当然います。それでも、白内障手術をするとみな老眼になるものなのですよ、と思い込まされて、わざわざ不便な見え方にさせられてしまうのです。

 

そのような手術が、良い手術と言えるでしょうか? もし医師から「うちではこのレンズに決めています」と言われたり、レンズの詳しい説明がなかったりしたら、手術はいったん保留にし、セカンドオピニオンをとるほうが賢明だと私は考えます。

ポイント3:検査や手術に使う機器が新しいか?

眼という小さな器官のごく狭い範囲を、ぶれやずれなく精密に手術していくには、術者の手先だけに頼るよりも、より確実で安心なサポートがあったほうが間違いないです。手術に使う機械は新しいほど高性能であり、手術をより安全、正確に行う上での貢献度は高いと私は考えます。

 

レンズを決める際に用いる検査機器にも、同様のことがいえます。特に多焦点眼内レンズにおいては度数をきっちりと、患者さんにとっての良い見え方に合わせていく必要があります。そのため検査機器は、計測技術やデータの処理能力が高いほど、正確かつ短時間でレンズを絞りこむことが可能です。

 

とはいえ、どの医院にどんな機械が入っていて、それがどの程度新しいものなのかは、一般の人にはなかなか分からないのも事実です。大病院なら機械も最新のものを入れているだろうと思われがちですが、必ずしもそうとも言えません。

 

また、腕に自信のある医師のなかには、機械に頼らず昔ながらの、自分が長年かけて習得してきたスタイルで手術をする人もいます。正確であれば良いので、その方針が悪いというわけではないのですが、手技というのは術者のその日の体調によっても、できの良し悪しは違いますし、術者が歳を重ねれば、普通はだんだん衰えていくものです。しかも、どんなに経験が豊富であっても、近年のテクノロジーには敵わないのです。

 

機械を使うことで常に高いクオリティの手術が可能になるのなら、そのほうが良いのは誰が考えても明らかでしょう。

 

一般の人には「分かる範囲で」としか言えず歯がゆいのですが、ホームページなどで使用機器の情報開示をする医療機関も増えてきましたので、判断材料の一つになるかもしれません。

 

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図解 白内障かなと思ったら読む本

図解 白内障かなと思ったら読む本

川原 周平

幻冬舎メディアコンサルティング

目がかすむ、眩しい、ダブって見える…。その症状、白内障かもしれません。 いまや「目の国民病」といっても過言ではない白内障ですが、近年では精密な器具の開発等により、手術の安全性は高まっています。 とはいえ、納…

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