発達障害は、発現する乳幼児期から適切に療育を行うことで、本人の「生きづらさ」を改善することができます。人とのコミュニケーションが上手くいかない等、「生きづらさ」を理由に医療機関を受診し、大人になってから「発達障害」が発覚するケースが増加しているいま、「児童発達支援事業」の充実は急務だといえます。しかし、療育の機会を望んでいる子どもたちに対して、事業所数が圧倒的に足りていないのが現状です。本連載では、27年前から幼児教育に取り組んでいる株式会社コペルの代表取締役の大坪信之氏に、フランチャイズ投資先としての「児童発達支援事業」の最新事情を伺いました。第1回は自身がADHDであると公表している大坪氏の幼少期からの体験をもとに、「乳幼児への療育の重要性」を解説します。

最近、「大人の発達障害」が増加している

「大人の発達障害」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。

 

仕事がスムーズに進められない、片づけられない、人とのコミュニケーションがうまくいかないといった悩みを抱えている人たちが医療機関を受診し、「発達障害」と診断されるケースが増えていることから、この言葉が流布してきているようです。

 

私自身も発達障害のひとつ、ADHDなのですが、興味関心が沸くと極端にのめり込む性質を持っています。いい方向に力を発揮できれば良いのですが、たとえば規則性のあるものを見つけると、そこに視線も心も集中してしまうという少々困った特性でもあります。

 

カーテンや道の敷石、新幹線のシートなど、規則的な模様は特に私を虜にします。家族や同僚に声をかけられて、ようやく模様から心と目を離せるのですが、もし周囲の人に私の障害を伝えていなければ「変な人」「仕事に集中できない人」とレッテルを貼られるのは確実でしょう。

 

そうした小さな特性を発達障害の人はいくつも持っており、それが社会生活の困りごとへとつながり苦しみます。ようやく医療機関を受診した結果「発達障害」と診断され「つらかった過去から解放された」と話す人は少なくありません。

 

実際、タレントや芸術家などのカミングアウトも続いていますし、世界的なダイバーシティの背景からマスコミもこぞって発達障害を題材にしています。こうした流れを受け、医療機関を受診するハードルも低くなっているようです。

なぜ大人になるまで診断されない人が多いのか

「大人の~」という言葉のせいで、大人になってから発達障害を発症したと勘違いされることもあるのですが、発達障害は生まれつきの脳機能の障害を指します。国の定める発達障害者支援法でも「その症状が通常低年齢において発現するもの」と記されています。

 

では、なぜ「大人の発達障害」の人たちは、成人するまで診断されなかったのでしょうか。

 

ひとつには、発達障害の子どもたちのほとんどが、外見上、一般的な子と何ら変わりがない点にあります。総合的に見て、一部の教科やスキルに関しては人より抜きん出ている子もたくさんいます。そのため、発達障害について知識を持たない大人からは「わざとやっている」「努力不足」「怠けている」と見られてしまい、親もまさか障害だとは思わず、診断の機会を逃してしまうのです。

 

もう一つの側面として、法的に「障害」として認められるようになってからわずか15年しか経過していないという点にも目を向けるべきでしょう。前述した発達障害支援法の施行は2005年。ようやく教育の場で「困っている子たちは発達障害かもしれない」とささやかれるようになった時期です。

 

とはいえ、すぐに発達障害に対する認知が広まったわけではなく、親の会や精神科医などの地道な働きかけによって、少しずつ教育や医療現場、保健所での対応が変化していきました。

 

そうした背景を考えると、現在、30歳以上の人が子どもの頃に発達障害と診断された可能性は極めて低いはず。困り感を抱えたまま大人になった今、ようやく診断がついて「苦しかった」気持ちから解放されているのも納得できます。

発達の偏りをサポートする「早期療育」の存在

ただ、残念なことに診断がついたからといって、発達障害が治るわけではありません。困っている症状を軽減するための薬はあるものの、脳の機能を改善させる医学的な方法は見つかってはいません。

 

大人になって発達障害の診断を受けた人は、投薬を続け、世間と自分の乖離に折り合いをつけながら生きいくしかないのです。脳は成長しきっていますし、その人なりの考え方の癖や身に付いた行動パターンを変えることは非常に困難だからです。

 

では、もし乳幼児期に適切な教育や療育を受けることができたらどうでしょうか。

 

「じっとしていられない」「感情のコントロールができない」「こだわりが強い」といった発達障害の子の問題行動には、必ず原因があります。たとえば聴覚や触覚が敏感過ぎる、目の動きの発達が遅れている、視覚認知機能の未発達といったものです。これらは持って生まれた特性であって、一朝一夕で改善できるものではありません。

 

しかし、それらを補うために別のスキルを組み上げ、結果として「できる」ようにしてあげられれば、本人の困り感は格段に減らすことができます。

 

そのためには療育をできるだけ早期に開始する必要があります。乳幼児の経験は脳の発達に大きく影響し、年齢が低ければ低いほど効果が上がるからです。

 

私たち株式会社コペルが「児童発達支援事業」として行っている『コペルプラス』では、子どもたち一人ひとりの能力を引き出し、自発的に成長していくようサポートしています。現在、全国に200以上の施設を開室していますが、需要に対し供給は追い付いていません。

 

ここ数年は、各自治体の保健所でも発達の偏りを早期に発見しようとする動きがあり、3歳未満で発達の偏りを指摘される子どもが急増しています。小学生未満の乳幼児に対する療育の場が今後も求められるのは必至でしょう。

 

「大人の発達障害」で苦しむ人を一人でも減らすためにも、幼い子どもたちへの支援の輪を広げる努力が急務だと、日々、実感しています。

 

なぜ、今「児童発達支援事業」が求められているのか…
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