
銀行の重要な仕事のひとつに、企業への「融資」があります。お金を貸してもらった企業は、それを元手にビジネスチャンスをつかむわけですが、当然ながら、融資には条件があります。なかでも重要なのは「担保」と「個人保証」で、銀行がそれらを社長に求めるのは、単に貸し倒れを防ぐ以外の目的もあるのです。自身もメガバンク出身の経済評論家・塚崎公義氏が解説します。
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銀行が金を貸すのは「安全確実」と判断した相手だけ
読者の皆さんは、借金を申し込んだ経験があるでしょうか? 「お母さん、今月ピンチだから助けて…」などと、家族に泣きついたことがある人は多いかもしれませんが、本稿で解説するのは、上記のような家族間のお金の貸し借りではなく、銀行と企業の間における「ビジネス上のお金の貸し借り」というシビアなお話です。
銀行の重要な業務のひとつに「融資(あるいは貸出。お金を貸すこと)」があります。そして、銀行の貸出は、安全確実と思われる先に行うのが原則です。消費者金融は、借り手の返済能力をそれほど調べず、比較的「気楽に」貸しますが、それとは異なるわけです。
消費者金融は気楽に貸すため貸し倒れ損も多いのですが、そもそも貸出金利が高いので、貸し倒れ損があっても儲かるのです。一方、銀行の貸出金利は消費者金融よりはるかに低いですが、貸し倒れ損が少ないので儲かる、というわけです。
銀行は、安全確実な融資を心がけているため、融資先の会社のことをしっかり調べます。財務諸表をしっかり見るだけではなく、経営者とじっくり話しをしたり、最近の売り上げ動向をチェックしたり、さまざまな調査を行います。

なぜ銀行が求める担保は「不動産」が圧倒的に多いのか
銀行はそれに加え「担保」をとる場合も多くあります。担保というのは「私が借金を踏み倒したら、私の家と工場は銀行が勝手に売ってしまって構いません。売った代金は借入金の返済に使って下さい」といった誓約書を借り手に書いてもらうことです。
担保となるのは、主に「不動産」(土地や建物など)です。「動産」(借り手の倉庫の中の在庫品など)を担保にする場合もありますが、決して多くありません。動産には、借り手が勝手にだれかに売ってしまう可能性や、借り手が夜逃げをするときに持ち逃げされるリスクがあるため、銀行としては担保にとったとしても安心できないからでしょう。
とはいえ、不動産であっても、借り手がだれかに勝手に売ってしまうリスクはありますし、同じ不動産を担保に多くの銀行から借金しているといったリスクもあります。そうなると、銀行は「担保の不動産を売って貸出金を回収する」ということができなくなります。
そんな事態になっては困るため、不動産には「登記」という制度が設けられています。役場に行くと「登記簿」という帳簿があり、そこには「所有権者」(この不動産を持っているのは誰であるか)、「抵当権者」(この不動産は誰かの担保になっているか)が書かれているのです。
銀行は、担保をとる前に登記簿を見ます。「本当に借り手が所有している不動産なのか」「ほかの銀行の担保になっていないか」等を調べるわけですね。
それらを調べたうえで、大丈夫ならば融資をします。その際、担保の契約をしたら、銀行は登記簿の抵当権者の欄に、自行の名称をしっかり記入する必要があります。登記簿に自行の名前が書いてあれば、万が一のときも、売却して代金を返済に充てられるだけでなく、ほかの銀行が勝手に売却できなくなるからです。