新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

コロナ禍が加速させたデリバリービジネスの隆盛

これをシステム化したのが、ピザや弁当などのチェーンです。彼らは自身で配達網を築き、電話などで注文を受け、バイクなどで配達するというものでしたが、すべてが自前であったため効率が悪く、また単品でのデリバリーなので客に飽きられるという欠点がありました。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

そこで考えられたのが、あらかじめ複数のチェーンやレストラン店舗と契約して、ピザだろうが寿司だろうがいろいろな食事を引き受けて注文先に届けるという新たなデリバリーサービスです。「出前館」という会社では飲食店約2万店と契約。インターネットで予約を取り、客が指定した場所に届けるというサービスを展開して成長しています。このサービスには出前館のほか楽天デリバリーやUber Eats、maishokuなどが参戦しています。

 

コロナ禍では、テレワークと同様にデリバリーサービスの社会実験を行なったようなものとなりました。なぜなら多くの飲食店が3密を伴うということで、お店に定員に達するような顧客を受け入れることができなかったこと、また営業時間を制約されたために売上機会を失ったこと、顧客自体がSTAY HOME で食べに来ないことなどから、経営危機に瀕しました。多くの店ではテイクアウトなどで当面を凌ごうとしました。さりとてデリバリーをする機材も人材もいません。そこでデリバリーサービスを展開する会社と契約し、その会社に注文先まで届けてもらおうということになったのです。

 

デリバリーサービスの利点はネットで予約を取り、お店の近隣などにいる運び人に自転車やバイクで届けてもらうため、お店の従業員を使わなくてすむというものです。コロナ前からこうしたサービスは存在したのですが、コロナ禍で自宅に籠もる人が激増し、混み合うスーパーなどに行きたくない人たちからの注文が殺到。これまではデリバリーを引き受けるアルバイトが少なく人手不足だったのが、コロナ禍で職を失った人がこのバイトに応募したために、サービスが急拡大するに至りました。

 

インターネットでの注文が主体のサービスであるため、配達先は家や事務所でなくてもどこでも自由。たとえば海岸でバーベキューを楽しんでいるグループがピザを食べたくなれば、位置情報システムで場所指定をすれば、届けることができます。こうした便利さもコロナ禍でやむを得ず注文した新しい顧客から評価され、ビジネスの拡大につながっています。

 

デリバリーサービスの拡大はポスト・コロナにおいて、一定のシェアを取っていくものと考えられます。今後は外食という概念が変わってくるかもしれません。つまりお店に行って店の雰囲気を楽しむのではなく、自分の好きな場所、都合の良い場所で、そのとき自分が一番食べたいものを気軽に注文する、いわば家の外全体が外食する場所になるのです。既存の飲食の概念が大きく変わる可能性を持っているのがデリバリーサービスだと言えるでしょう。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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