新型コロナウイルスの感染者が世界最多のアメリカでは、8月31日時点での累計感染者数がついに600万人を超えました。ニューヨーク市の学校のみが9月末の再開を予定するなか、多様性を重要視する富裕層が、我が子を通わせたいと注目する「ボーディングスクール」は、どのような予防措置を実施しているのでしょうか。本記事では、SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長・髙宮信乃氏が東海岸を中心に、北米にあるボーディングスクールが実施する「新型コロナウイルスへの予防措置」について解説します。

対面授業再開「ボーディングスクール」の予防措置とは

東海岸のボーディングスクールに通う弊社のお客様の多くも、この9月に渡米し、現地で対面授業を受けています。New Normalにより新たな規則や制限が求められる一方、特に5カ月ぶりにキャンパスに戻った在校生については、対面授業や課外活動、寮生活といった機会を改めて得難いものとして実感している様子です。

 

一方で、同様に9月から対面授業を再開した大学については、より自由度の高い大学生活のなかで学生の軽率な行動により再開計画が妨げられ、結果的に対面授業を中断し、オンライン授業への意向を余儀なくされたという例が報告されています。

 

刻一刻と状況が変わるなか、対面授業を再開したボーディングスクールの取り組みについて、「Mitigation(緩和)」「Test(検査)」「Tracing(追跡)」「Treatment(対応)」の観点から見ていきましょう。

 

まずは「Mitigation(緩和)」。ワクチンや特効薬がない現状では、災害と同じく完全な予防は不可能という考え方のもと、様々な予防措置が採用されています。

 

まず6フィートのソーシャルディスタンスを確保するため、教室や寮の部屋あたりの定員を制限。また、広大なキャンパスの特に屋外エリアを教室や食事の場所として活用できるよう、夏休みの間に広範囲のリノベーションが実施されました。

 

衛生管理も徹底して行われています。マスクの着用や消毒液の設置などはもちろんですが、換気システムのアップグレードや清掃スタッフの増員、使用頻度の高いドアにはハンズフリー機能を設置するなどの対策も取られています。

 

教室を離れる時に生徒自身が責任をもって使用した机を消毒するのも、New Normalの一環です。こうした衛生管理に生徒が腰を据えて取り組むことができるよう、休憩時間を普段より長めに設定する学校も出てきました。

 

テクノロジーの活用も忘れてはいません。生徒や教職員、スタッフは毎日の健康チェックのためのアプリを自身の携帯にインストールするよう求められ、所定の条件をパスすることではじめて登校が認められます。

 

新型コロナウイルス感染拡大以降、アメリカでは州独自のContact Tracing App(接触追跡アプリ)の開発が進んでいる
[図表2]接触追跡アプリ 新型コロナウイルス感染拡大以降、アメリカでは州独自のContact Tracing App(接触追跡アプリ)の開発が進んでいる

 

対面とオンラインでのハイブリッド授業の実現も、学校側の対策に多様で柔軟な選択肢を提供することを可能にしています。例えば、感染の疑いがあるなどの理由で、一定期間の隔離が必要になった場合、生徒は場所を問わずオンラインで通常の授業に参加することができます。

 

春学期にキャンパス閉鎖を余儀なくされた際、迅速にオンライン授業への切り替えを行ったボーディングスクールでしたが、その際に提供したのは100%のオンライン授業でした。そこでの成功に満足するのではなく、多くのボーディングスクールでは夏の期間中、新年度からのハイブリッド授業の提供に向けて準備を進めてきました。

 

春学期のオンライン授業に関する生徒や保護者からのフィードバックを参考に、また学校によっては360度カメラを全教室に設置するなどして改良を重ね、渡航制限などの理由で渡米できない留学生も含め、全生徒ができる限り公平に授業に参加できる環境を提供しています。

 

混沌とした状況のなか、一人ひとりの生徒の個性に重きを置き、集中的な大学進学準備サポートを提供するボーディングスクールは、かつてないほど、生徒や保護者から注目を浴びているように感じます。その期待に応えるべく、ボーディングスクールの挑戦は続きます。

 

 

SAPIX YOZEMI GROUP 海外事業開発部長

Triple Alpha 副会長

髙宮信乃

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