絶えず動いて落ち着きがない、話すときに視線が合わない…。一見すると、発達障害があるのか、それとも性格や気質の問題なのかわからない子どもが、全国の幼稚園や保育園で増加しています。今回は、分野において異なる「発達障害」の定義や、発達障害の「問題行動」への理解が進んだ背景について解説します。※本記事は盛岡大学短期大学部幼児教育科教授である嶋野重行氏の著書『もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

 

教育での定義

「発達障害」という言葉は、平成11(1999)年7月に文部科学省が「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査協力者会議」の報告のなかで使われており、学校に在籍する学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症(知的発達の遅れのない自閉症)の子どもへの指導について対応するうえで考えられてきた言葉です。

 

教育での定義は、文部科学省の定義する発達障害のことで、LD、ADHD、高機能自閉症(のちに知的発達の遅れのない自閉症スペクトラム障害[ASD])のことで、概念は[図表]のようになります。参考までに知的障害も位置づけてみます。発達障害は知的障害より多いと考えられます。DSM‐5では、知的障害は知的能力障害になります。

 

[図表]発達障害の概念

 

発達障害のある子どもは通常学級に多く在籍し、平成11(1999)年時点で、全国の小・中学校に約万人以上いるとされました。通常学級に1〜2人は必ずいる計算でしたので、特別支援教育の対象域は、通常学級にまで広がったのです。

「発達障害」という総称に統一された背景

平成19(2007)年3月の文部科学省の通達で、軽度発達障害という言葉は使わずに「発達障害」という用語に統一しました。それまでLD、ADHD、ASDを包括する明確な言葉がなかったのです。

 

それまでの「軽度知的障害」という言葉では障害の程度が軽度であるかのようにとらえられがちで、支援の程度も含めて、障害の程度を考えるようになったため、軽度という言葉は誤解されやすかったからです。知的機能は低くはなくても、対人関係で重篤な困難を抱えていることがあれば、必ずしも障害が軽度ではないと考えられます。

 

それまでの教育現場ではいろいろな呼び方がされていました。平成15(2003)年、私は全日本特別支援教育研究会岩手大会の研究部運営委員長をしていました。大会を開催するときに、分科会の名称を決めづらかったのです。その後、LD、ADHD、高機能自閉症、アスペルガー障害、軽度発達障害などを総称して「発達障害」という呼び名に統一されていきました。これにより教育現場の混乱は収まったと思います。

 

当時は、高機能自閉症とアスペルガー障害、広汎性発達障害の自閉性障害という言い方がありましたが、DSM‐5によって、自閉症は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」(ASD)に統一されました。

 

さらに、ASDの症状に「感覚障害」が加えられました。それまでも感覚障害が発達障害の主症状に影響しているように思われましたが、明確に診断基準に入っていませんでした。感覚障害が入ったことで、発達障害の行動特徴である「耳を塞ぐ」「触られると嫌がる」「靴下を履きたがらない」「一丁食い」「偏食」「パニック」などの感覚とかかわっていると思われる行動問題への理解が進みました。

 

 

 

※本記事は連載『「気になる子ども」との向き合い方』を再構成したものです。

 

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もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方

もしかして発達障害?「気になる子ども」との向き合い方

嶋野 重行

幻冬舎メディアコンサルティング

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