亡くなった方の配偶者が取得した財産には、一定額までであれば相続税がかからない「配偶者控除」という制度があります。しかし、この制度をよく知らず、むやみに適用してしまうと、得をしたつもりが実は数百万円・数千万円も損をしてしまうこともあります。正しい知識を身に付け、もしもの時に備えましょう。今回は相続税の「配偶者控除」について解説します。※本連載は、新宿税理士事務所の税理士である坂根崇真氏が、相続税対策の基礎知識について解説します。※本記事は 「新宿相続センター」掲載の記事を転載・再編集したものです。

 

次に前回全ての財産を相続した母が亡くなり、相続税の申告が必要になりました。

 

出典:あんしん相続税(https://tax.brushmaker.co.jp/souzokuzei/ienakiko/ )
[図表11]全ての財産を相続した母が亡くなり、相続税の申告が必要になった場合 出典:あんしん相続税(https://tax.brushmaker.co.jp/souzokuzei/haigushakoujo/)

 

すると相続人である子供たちは、1億円の相続財産を相続するのに、兄弟2人で合計770万円の相続税を支払うことになります。

 

父の相続時に配偶者控除を目一杯使った場合、父の相続と母の相続を合わせた納税額は770万円ですが、父の相続の時に次の相続のことまで考えて遺産分割を行うと、トータルの相続税額を減らすことができます。

 

たとえば、父の相続時の財産1億円を以下のように分けた場合の相続税の負担は[図表12]の通りです。

 

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[図表12]相続税の負担 出典:あんしん相続税(https://tax.brushmaker.co.jp/souzokuzei/haigushakoujo/)

 

次に、母の相続時の計算をします。母の遺産は父から相続した4,200万円のみとします。

 

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[図表13]母の遺産相続時の負担 出典:あんしん相続税(https://tax.brushmaker.co.jp/souzokuzei/haigushakoujo/)

 

兄弟2人が相続した財産額は4,200万円ですが、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数2人)の4,200万円以下のため、相続税の申告および納税が不要になります。

 

このように、父の相続時に配偶者控除を目一杯使うかどうかで、父の相続、母の相続を考えた場合の税負担が異なります。

 

・父の相続で配偶者控除をフル活用⇨トータル770万円の相続税

・母の相続まで見越して相続⇨トータル366万円の相続税

 

この差額は約400万円です。他にも、むやみに配偶者控除をフル活用し、後々、何百万円、何千万円と損してしまう事例をいくつも見てきました。

 

一時的に大きく得したつもりになって、実はもっと大きく損をしてしまうことのないように、しっかりと二次相続まで考えた遺産分けを行うために、税理士によく相談するようにしましょう。

 

遺産の分け方次第で相続税額は大きく変わります。遺産分けをどのように行うか、その場限りで考えるのではなく、5年後10年後、将来を見据えて考えることが大切です。

 

相続税の仕組みは複雑であり、その次の相続まで考えるのは、税理士であっても、慣れていない方にはむずかしいほどです。数年先を見据える場合、不確実な要素も増えてきますので、色々なパターンを考慮して将来設計を行う必要があります。

 

 

坂根 崇真
新宿税理士事務所 代表税理士

 

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