いつの時代もなくならない相続トラブル。「生前しっかり話し合ったから大丈夫」…ではないのです。大切な人の死後、まさかの事態が起きてしまったら? 相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏が実際の事例をもとに解説します。今回は、生前における遺留分の放棄について。 ※本連載は遺言相続.com掲載の事例を編集したものです。プライバシーに配慮し、相談内容と変えている部分があります。

「母さんには聞いたのか?」長男は何かを知っている…

父は何かピンと来たのでしょうか。B子さんに「なあ、あいつに電話して聞いてくれないか」と長男に連絡をさせました。俺にも聞こえるように、との令を受け、B子さんはスピーカーにした状態で長男に話しかけます。

 

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「あ、兄さん、元気? いきなりごめん」

 

「おぉ。どうした?」

 

「今実家に来てるんだけど、〇銀行の通帳どこいったか知ってる? 父さんと母さんから教えてもらったお金が入ってるやつ。なんかそれだけ見当たらなくて、今父さんと探してるんだよね」

 

「えっ…………知らない。知らねぇよ。なんで俺に聞くんだよ、そんなこと」

 

その「間」を、父とB子さんは不審に思いました。(あ、何かあるかも、これ…)疑念を抱いたB子さんは続けます。

 

「家の中、結構探したんだけどないんだよね。もし盗まれてるなら口座一度止めたほうがいいし、早めに解決したくて」

 

「母さんには聞いたのか?」

 

「いや、出かけててまだ聞いてない。母さん知ってるのかな」

 

「とにかく、俺は絶対何も知らないからな! もう切るぞ」

 

一方的に電話を切られ、B子さんと父は顔を見合わせます。不穏すぎるから、とりあえず母さんに事情を聞こう…と意見が合致したそのとき、母が帰宅。休む間もなく問い詰めます。

 

「ねぇ母さん、あの通帳どこ?」

 

「あのって、何?」

 

「あの、万が一のときのお金。ないのよ、どこ探しても。兄さんにも電話したんだけど知らないって。母さん何か知ってる?」

 

「あっ、あ~あれね。えっと…あれは…確か…どこかしら…」

 

母の動揺が伝わります。何を質問しても口をもごもごさせるばかりで、話が要領を得ません。業を煮やした父が「おい、なんか隠してるだろ! 今すぐ正直に言え。今すぐだ!」と大きな声を出しました。

 

すると、母がついに口を割ったのです。

 

「…タカちゃんが『ブログで稼ぐんだ!』って言ってたの。私にはよくわからないんだけど、インターネットに日記を書いて商品を売ればお金が入るらしいのよ。ただ初期費用が必要らしくて…」

 

「…なんなの、その話。で、いくらあげたの」

 

「300万円ぐらい…」

 

「あの通帳から?」

 

「はい…」

次ページ長男と母の秘密が判明。さらに話を聞いていると…

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2020年8月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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