どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

気を許したのはお気に入りロック歌手のファンだった

予定通り、男性職員は転勤していきました。結局、転勤のことはHさんには伝えていません。数日後、他の介護職員に対し、Hさんより「最近AAさんの顔が見えないようだけど」という、恐れていた確認がありました。隠しておくことはできないので、介護主任が転勤したことをHさんに伝えました。しかし、彼女はわれわれの期待を裏切り、間髪を容れずに提案をしてきたそうです。「今月から私のリハビリの同行は、BB君にお願いできるかしら」と。がっかりするどころか、嬉しそうにそう言ったそうです。

 

Hさんのリハビリ通院はBB職員により続いています。そして、彼女のお気に入り職員は、BBさんに移行しています。口の悪い介護職員は「結局、若い男なら誰でもいいんじゃない」などと揶揄しています。

 

結論から申し上げると、Hさんが気を許し、受け入れてくれる理由は、容姿ではなく、毎日のように聴いているお気に入りのロック歌手のファンであることだったようです。前任職員も、後任職員も、リハビリテーション病院の先生も、3人とも、このロック歌手の大ファンであったことが理由だったのです。

 

それから半年後、Hさんは脳出血で亡くなりました。葬儀会場には、お坊さんの姿はありません。その代わり、Hさんの写真の横に、大きなお気に入りのロック歌手の写真が飾られ、特別仕様の車椅子に装備されたCDデッキから、大音量でロックが流れていました。

 

「アイラブユー OK?」。きっとHさんの声が葬儀会場の参列者にも聞こえていたはずです。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

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