新型コロナウイルスの流行により、全世界で医療崩壊が相次いだ昨今、「命の線引き」という言葉も取り沙汰されるようになりました。ジレンマに苦悩する医療従事者も多く、医療現場では「医師のマネジメント」が重要になっています。そこで本記事では、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、解説していきます。

重要なのは「戦略的医師ブランディング」

医師個人のブランディングを病院や大学が助けることが病院経営上も重要です。これからのリーダーが志すべきことは「非凡な人材を掘り起こすのではなく、平凡な人材が非凡なことができるように環境を整えること」とマクスウェルは言っています(上田 泰著『組織行動研究の展開』白桃書房)。

 

アイドルグループのAKB48は秋元康氏が身近にいる素人を連れてきてスターに仕上げ
た(ブランディング)ものであり、医療の世界でも戦略的医師ブランディング(strategic physician branding:SPB)が必要です。

 

元AKB48の前田敦子さんが主演で映画にもなったのが、岩崎夏海氏の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で、2010年のベストセラーですが、岩崎夏海氏は秋元康氏の弟子だったことがあるらしいです。

 

パーソナルブランディングのためには都市部のブランド病院の一員となるか、自身の専門性を認めてもらい、多くの症例を集めることができる中小病院に入るかなど、SPBが可能な病院に医師が集中します。地域の医療ニーズにこたえようとして救急患者をなんでもかんでも受け入れたり、すべての診療科をそろえたりあるいは、専門外領域の診療を強制したりすることで、SPBは破たんし、医師不足に陥りさらに残った医師に負担を強います。

 

SPBを成功させるためには、診療科や治療チームなどのチームブランディング、さらに病院全体のブランド化(ホスピタルブランディング)へ拡大することが必要です。また病院そのものが強いブランド力を有している場合には、ホスピタルブランディングからチームブランディング、さらにパーソナルブランディングへと落とし込む手法もあります。

 

インターネットの普及によって医療者間の知識格差は少なくなり、学習可能なスキルや知識は高収入に繫がらないと考えます。SPBを成功させれば、その医師個人の市場価値が上がるため、病院としては、他病院や企業からのヘッドハンティングや、労働条件や給与面の改善を迫られるリスクを背負うことは覚悟しておかなければなりません。

 

しかし、その場合もその個人が異動してからも人的交流、協同作業を継続することで得られる長期的メリットの方が大きいと考えます。スターを生み出していくことがこれからの病院経営上でも極めて重要です。

 

※本記事は連載『MBA的医療経営』を再構成したものです。

 

 

角田圭雄

愛知医科大学/内科学講座肝胆膵内科学准教授

 

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