どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

元悪ガキ板金職人の生活が羨ましい

しかし、今は……。二人の子供たちは、親のことなどいっこうにお構いなし。ドイツにいる長男とは10年以上音信不通です。以前、お父さんのことを相談しようと香港にいる次男に電話をしたところ、「不動産でも何でも売り払って、二人で老人ホームの世話になればいいじゃないか。そんなくだらないことで、いちいち電話をしてこられると迷惑。今度電話してくる時は親父が死んだ時にしてくれ」とまったくつれない返事だったと言います。

 

小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)
小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)

いつも、駅から自宅への帰り道、決まって小さな3階建てのO君の家の前を通ります。猫の額ほどの小さな敷地に粗末な家が建っています。O君はこの家で今もまだ元気な両親と奥さま、そして3人の子供と大家族で暮らしています。お父さんから引き継いだ板金屋さんの立派な社長さんになっています。見たところ、けっして裕福とは思えませんが、家じゅうから家族の怒鳴り声や笑い声が毎日聞こえてきます。

 

いったいどちらの人生が幸せだったのだろうか。昔は、自分のことを「何て幸せな人生を送っているのだろうか」と真剣に考えたこともありましたが、今では寂しい人生だったとしか、奥さまには思えません。

 

「『おばちゃん、最近おじちゃんを見ないけど具合でも悪いの』と、O君は私を見ると必ず声を掛けてくれます。うれしいのか情けないのかわからない涙を必死にこらえて『主人は今、老人ホームに入っているのよ』と答えるのが精一杯です。一流大学を出て一流の仕事について、経済的にも恵まれている自分の子供と、高校も途中で投げ出し、鑑別所にも何回も入れられた元悪ガキの板金職人。今となっては、自分たちは子供の育て方を間違えたという結論にしか至りません。子供や孫たちと共に寄り添い合って相手に依存しながら、相手のことを考えて暮らしているOさんの家。本当に羨ましいと今は思っています」

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

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