2018年に社会問題となった、新築シェアハウス“かぼちゃの馬車"破綻事件以降、不動産投資へのネガティブなイメージが広がっています。しかし、ある一定の条件を揃えることで、収益不動産を活用した資産形成は実現できます。ここでは、だれも気づかなかった投資用不動産物件の評価基準について詳述します。※本記事は『新富裕層のための戦略的不動産投資』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

従来のルールが破綻したとき、何が起こるか?

中古郊外RCが資産価値、利益率ともに高いということはすでにお伝えしてきた通りですが、「なぜそんないい物件が安く手に入るのか」と疑問を抱かれた方もいるでしょう。

 

実はここまで述べた内容は、決してすべての人に当てはまることではありません。たいていの人は中古RC物件に対して、「キャッシュフローが回らない」という結果になります。

 

利回りは高くてもキャッシュフローが悪い。その答えはシンプルで「融資条件が悪いから」です。言い換えれば、中古RC物件購入に際してのいちばんの壁は融資のハードルが高いということです。つまり、誰でも買える物件ではなく、新富裕層のように属性がよかったり実績が積まれていたりしないと、いくら欲しくても土俵に立てないということです。

 

では、なぜ融資条件が悪くなるのでしょうか。それは、中古物件だと法定耐用年数以内の期間に融資が制限されてしまうからです。

 

金融機関の融資条件を決定するのにあたって、この「法定耐用年数」という数字は非常に大きな意味を持ちます。法定耐用年数とは簡単にいうと、ある構造で建築された建物はいったい何年間使用可能かというのを、税務上の理由で定めたものです。RC物件だと法定耐用年数は47年となります。

 

「法定耐用年数から築年数を引くと、残存年数は残り○年だから、その期限内の融資期間で融資を出す」というのが、一般的とされています。

 

ただ、この法定耐用年数の考え方は劇的に変わり始めています。今後、これまでの融資基準は変わっていく可能性が高いです。

 

これは私の推測なのですが、融資に法定耐用年数という指標がいまだに存在する理由は「旧耐震(昭和57年以前に建てられた)基準に基づいて建てられた物件を世の中からなくしたいから」なのではないかと思っています。法定耐用年数がないと旧耐震の物件が生き延びてしまうので、そうした基準で融資も判断しているのではないかと考えています。

 

とはいえ、2018年が終わり、時代は令和に突入しました。新耐震基準に基づいて建てられた物件のなかにも、すでに築35年以上のものがありますが、旧耐震基準時の築35年の物件とは比べ物にならないくらいの耐震性・耐久性が担保されています。にもかかわらず、これまでのように「耐用年数が残り15年なので融資期間は15年までです」というのは明らかに時代錯誤的な考え方です。

 

したがって、私は近い将来、必ずこの「法定耐用年数」という指標は融資基準から外れると考えています。

 

実際、いくつかの地銀から耐用年数を大幅に超える融資を引くことができた方が、当社のお客様には多数いらっしゃいます。

 

そのため、かつては「法定耐用年数から見て残り15年しかないので、融資はこれくらいだな。これだとキャッシュが回らないから価格はこれくらいだな」と値段が抑えられていた物件が、この基準が見直されて長期の融資がスタンダードになったとたんに価格が上昇する可能性は十分にあります。

 

下記の図表をご覧ください。想定利回り8%の1億円の物件を自己資金を1割出して購入した事例です。金利1%で融資期間17年と30年では月々のCFが20万円以上の開きがあります。

 

※ 1億円、想定利回り8%、経費等200万円、自己資金1割、金利1%
[図表]融資期間17年と30年の場合での税引前CFの比較 ※ 1億円、想定利回り8%、経費等200万円、自己資金1割、金利1%

 

これまでは「法定耐用年数の残存が短くなった物件」は「売る」でしたが、「あえて購入する」という選択肢は非常に有効だといえます。しかし現状、そのことに気づいており、さらにそれを購入できるだけの資産力を持っている人はまだまだ少数派です。

 

少し前まで、「海外不動産であれば、減価償却が一気に取れるから」という理由で海外不動産投資を行う人がいました。しかし、そんな明らかな節税の抜け道を国が許すわけがありません。実際、2020年度税制改正で海外不動産投資の中古物件を利用した節税策ができなくなりました。

 

この海外投資における節税スキームを活用していたのは所得税率の高い「会社経営者」「高額給与所得者」でした。つまり、新富裕層のなかにも海外不動産で節税をしていた人がいるかもしれません。

 

このように、ある日突然、法律が変わり、それまでの常識がひっくり返ることはよくあります。法定耐用年数や減価償却についても、今後変わっていく可能性は大いにあります。私からすれば、今は日本の不動産に宝が眠っているとしか思えません。しかもその物件は、これまでの価値観からすると「きらびやかではなく地味な物件」です。投資とはそういうところが狙い目なのです。

 

耐用年数の問題でいえば、現在木造は22年ですが、長期優良化住宅や耐震等級、劣化等級などで22年以上であっても価値が維持される方向に進んでいます。同じRCの法定耐用年数47年も近い将来、「そういえば47年の時代があったな」となる可能性は非常に高いといえます。

 

ちなみに、ここまで当たり前のように使ってきた「RC造の耐用年数は47年」という基準ですが、実は過去何度も改訂されています。しかも、耐震基準は時代が進むとともに厳しくなっているにもかかわらず、耐用年数は時代とともに短くなっているのです。

 

私は耐震基準は上がっているのに、残存年数が減っていることに対して違和感を覚えます。

 

 

杉山 浩一
株式会社プラン・ドゥ 代表取締役
宅地建物取引士
マンション管理士

 

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