わが子には健康でかしこく育ってほしいもの。最適な子育てをするにはどうすればよいのでしょうか? 医学的・科学的な根拠に基づいて解説し、明日から実践できる具体策を紹介。※本連載は、医師、Child Health Laboratory代表の森田麻里子氏の著書『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

調べれば何でもわかる時代でも、子育ては疑問だらけ

「妊娠中は結局何を食べればいい?」

「哺乳瓶は消毒しないといけない?」

「子どもの睡眠時間はどのくらい必要?」

「やっぱりテレビはだめなの?」

「風邪をひいた! 家でできることはある?」

 

子育てをしていると、次から次へと疑問や悩みが出てきます。子どもたちを健やかに育て、持っている能力を最大限伸ばしてあげるには、一体どうするのがよいのでしょうか。子育てをするママ・パパはいま、子どものお世話や子どもとの直接のやり取り以外にも、こうした疑問についてその都度調べ、対応策を考えて決断するというタスクに忙殺されているように感じます。

 

私自身、はじめての妊娠がわかったとたん、嬉しさと同時にたくさんの不安や疑問が押し寄せてきました。

 

私は2012年に東京大学医学部を卒業して、その後は麻酔科で働いていた医師です。大学時代にはもちろん産婦人科や小児科について勉強もしましたし、研修医として、上司の医師と一緒にお産に立ち会ったり、赤ちゃんの診療をしたこともあります。体の仕組みや妊婦さんや赤ちゃんの病気について、ある程度は知っているつもりでした。

 

しかし医学部では、子どもの育て方を教わることはありません。子育てにおいては、一般のママ・パパと変わらない、全くの素人です。

 

妊娠したら何を食べたらいけないのか、こんな行動はしていいのか、赤ちゃんのお世話はどんな風にすればよいのか──そんな日常の疑問への答えは全く持っていなかったのです。

 

ありがたいことに、子育て情報は、昔と比べてとても手に入れやすくなっています。小さな赤ちゃんがいて家から出られなくても、ネットで情報を調べたり、本を注文したりすることができるからです。

 

しかし、そこには問題もあります。情報の数はたくさんありますが、書いてあることはそれぞれバラバラなのです。特定の商品を売るために偏った見方で書かれているものや、個人の体験談のみで語られるものもあります。ネットでは、間違った情報が他のウェブサイトで何度も引用されて、それを見た人が「多くの人がそう言っているからきっと正しい」と錯覚してしまうこともあります。

 

同じ食品でもネットや雑誌によって「OK」だったり「NG」だったり…一体どれが正解?(※写真はイメージです/PIXTA)
同じ食品でもネットや雑誌によって「OK」だったり「NG」だったり…一体どれが正解?(※写真はイメージです/PIXTA)

 

信頼できる情報源として、産院や自治体で行われる両親学級に参加するママ・パパも多いと思いますが、内容の充実度は地域や自治体によって違います。私の場合は沐浴やオムツ替えのやり方は教えてもらえたのですが、妊娠中の食事や赤ちゃんの授乳、寝かしつけなどについて、教えてもらう機会はありませんでした。育児書の中には、育児にまつわる疑問について、対応方法とその理由をきちんと説明してくれる良質なものも、たしかにありました。しかしその数は本当にごくわずかで、それでも解決できない疑問も出てきてしまいます。

 

途方に暮れた私は、結局、腹をくくって自分で調べることにしたのです。産休中の空き時間、そして出産後も息子がお昼寝している間のスキマ時間を利用して、夢中になって、子どもの睡眠や母乳・ミルク、食事など子育てに関する勉強を始めました。

 

息子を育てる中で疑問を持つたびに、一般書、洋書、医学書、論文などあらゆる情報源から質の高い情報を集め、そして実践してきたのです。人生で一番たくさん論文を読んだのは、医学生時代でも研修医時代でもなく、子育てを始めてからです。でもこれは、私がたまたま医師という職業で、医学系の論文や医学書から情報を集めるスキルを持っていたからこそできたことです。

 

息子が6ヵ月になる頃、私は麻酔科医としての仕事に復帰しましたが、もう一つ、私にはやりたいことがありました。

 

「最初からこういう知識を持っていたらよかったのに…」

「息子にもっとこういう風にしてあげればよかった…」

 

そんな私の後悔を、これからママ・パパになる方に味わってほしくない。私が知っておくべきだったと感じたことを、多くの人に伝えたい。そうすれば、同じように困っているママ・パパの手助けになれるのではないかと思ったのです。

医学・科学の発展により、子育ての常識も更新中

昔ながらの「おばあちゃんの知恵」だけで子育てするのは、難しい時代です。以前なら年の離れた弟妹のお世話をした経験のあるママも多かったでしょうし、祖父母の知恵や手助けを借りながら子どもを育てるのが普通だったでしょう。

 

しかし今は、私も含めて一人っ子が増えました。出産年齢が高くなったことにより、祖父母世代の子育ての記憶も薄れがちで、祖父母と離れて暮らす家庭も多くなりました。

 

子育ての目標も、ただ元気に育てばいいというだけでなく、できれば健康でかしこく育ってほしい、その子の能力をできる限り伸ばしてあげたい、そのために一番良い方法で育てたいと考えるママ・パパが増えていると思います。そして何より、医学や科学の発展により、新しい子育ての常識が更新され続けている。

 

今こそ、科学的な裏づけをもとにした子育て情報を、明日から実践できる具体的な形で、ママ・パパ、そして子どもに関わるプロフェッショナルの方々に伝えていく必要があると思うのです。

 

子育て中のママ・パパは、育児・家事・仕事に、もう十分過ぎるほど頑張っています。でも実は、子どものために「〜でないといけない」「がまんしなければならない」という制限は、あまり意味がなかったり逆効果だったりすることもあります。私もですが、子育て中はただでさえ余裕のない毎日です。思い込みのせいで必要のない努力をしているとしたら、もったいないですよね。どうせやるなら、本当に必要なところに絞って手をかけていきたいものです。

 

本連載では、子どものために何をしてあげるのがいいのかという疑問に、できる限り科学的な根拠のある情報から、具体的に答えることを目標としています。

 

もちろん、それを知った上でどの程度取り入れるかはママ・パパ次第です。まずはママ・パパが元気になることを大切に、何をしなくてよいか、どんなことなら無理なく取り入れられそうか、ということから考えてみてください。

 

また、子どもたちは誰ひとりとして同じではなく、それぞれ違った個性や性質を持って生まれてきています。ですから、「科学的に正しい」とはいっても、全員に当てはまる一つの「正解」があると言いたいわけではありません。同じ研究結果を見ても、その解釈は人によって、家庭によって、真逆になることだってあります。99パーセントの人に効果があることであっても、裏を返せば100人のうち一人にとっては効果がないと言うこともできます。

 

だからこそ、特に議論の分かれているトピックについては、研究そのものの結果をできるだけ正確に、かつ、わかりやすく解説することに努めました。その上で、私ならどうするか、私はどのように考えるかにも触れましたが、必ずしもみなさんがそうしなければいけないということではありません。それぞれのご家庭でどのようにしていくのか、考える材料にしていただけたらと思います。

妊娠中「本当に避けるべき食品」は5つだけ

マタニティ雑誌やネット上には、たくさんの“妊娠中に食べてはいけない食品リスト”があります。でも、それぞれ書いてあることが違って迷うことはありませんか。

 

たしかに、「食べても大丈夫」とは、専門家としてはとても言いづらいことです。人間の身体に関わることに絶対はありませんから、少しでもリスクがあるものは「ダメ」と言うほうが、指導する側からしたら安全だからです。でも、リスクがあるものは全部ダメなのであれば、人間は飛行機にも車にも乗れなくなってしまいます。

 

私は、自分が妊娠したときに、ちゃんと自分でリスクを判断したいと思い、なぜ食べないほうがいいのか、その理由を調べて考えてきました。ここでは、私ができるだけ食べないほうがいいと思う食品について、その理由も合わせて、お話ししていきます。

 

まず、できるだけ避けていただきたいものは5つだけ。加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモン、生肉です。どうでしょうか、これなら避けられそうだと思いませんか?

 

これらは、食べる量を少なくすればいいということではなく、全く食べないことをおすすめします。なぜかというと、これら5つを食べると、お腹の赤ちゃんに重大な悪影響のある微生物に感染するリスクがあるからです。

 

次ページ「5つのNG食品」…食べたらどうなる?

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    東京大学医学部卒、ママとしても奮闘中の医師が、世界の最新研究をリサーチして生まれた「使える」育児書。 「妊娠中は結局何を食べればいい?」 「哺乳瓶は消毒しないといけない?」 「子どもの睡眠時間はどのくらい必要…

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