約8割もの人が病院で亡くなる時代。誰もが、病名・余命告知や治療方針の希望などを、健康なうちから周囲に意思表示をしておく必要があります。今回は、シニア生活文化研究所・代表理事の小谷みどり氏の著書『ひとり終活』より一部を抜粋し、独居老人だからこそ考えておくべき、人生の幕引きについて考えていきます。

 

同席してもらえる家族や友人がおらず、ひとりで検査結果を聞くのが心細いようであれば、看護師や医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。医療ソーシャルワーカーは、患者やその家族・遺族に対して、社会生活で困っていることや悩みの相談を受けるアドバイザーです。病院のなかの「相談支援センター」「患者総合支援センター」「医療相談室」「地域連携室」といった名称の部署におり、相談は無料です。病院によっては、看護師や医療ソーシャルワーカーが同席してくれることもあります。

 

なかには、家族や友人に心配をかけたくないので、病状を知られたくないという人もいるかもしれません。誰にも知られたくないという患者の意思は尊重されますので、そんな場合には医師に伝えておくことが必要です。

延命を図ることだけを目的としておこなう「延命措置」

今や、約8割の人が病院で亡くなる時代です。ほとんどの人は、亡くなる直前に延命措置をどうするかという問題に直面することになります。厚生労働省が2017(平成29)年におこなった調査では、痛みはなく、意識や判断力は通常であっても、末期がんの場合、人工呼吸器や胃ろうなどの延命措置を望まない人は7割程度もいました。

 

延命措置とは一般的には、治癒の見込みがなく、死期が迫っている患者に対し、治すことを目的とするのではなく、延命を図ることだけを目的としておこなう医療をいいます。具体的には、人工呼吸器の装着、人工栄養、人工透析などが挙げられますが、どんな医療方法が延命にあたるのか、はっきりとした定義があるわけではありません。また同じ方法でも、死期が迫っていない患者に施す場合には延命措置とは考えません。 

 

たとえば、人工栄養の代表的な方法に、おなかの表面に穴をあけ胃に管を入れて栄養を送る「胃ろう」があります。終末期の患者だけでなく、認知症の患者を含めると40万人が導入しているといわれますが、認知症の高齢者の2割は、胃ろうによって体力が向上し、食べる機能(摂食・嚥下機能)が改善したという研究報告があります。

 

しかし、終末期患者の場合は、かえって身体の負担や苦痛につながり、単なる延命にすぎないという指摘があります。そのほか、心臓機能を補完するペースメーカー、輸血なども延命措置に該当する場合があります。心臓にペースメーカーを入れたり、腎機能が悪くて人工透析を受けたりしている人が、その治療をすることで日常生活を送ることができるのなら、延命措置とはいいません。

 

 

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