「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

クマネズミいわく「単にネズミだと侮るなかれ」

世界中の研究者たちがこのような行為を見逃してきたとは思えないので、どんくさいドブネズミでは見られないクマネズミだけが獲得できた社会行動である可能性が浮上してきた。ここでもクマネズミの方を上に見てしまった。飼育しにくい生き物だから今まで誰も観察できなかったのだとすると、世界初の報告ということになる。

 

そして、クマネズミを捕獲しにくい理由が、クマネズミだけが持っているこの特異な社会行動に起因するのだとすると、捕獲具の開発が長らく放置されていた理由も分かる気がする。

 

高度に発達した社会行動の前ではどんな優れた仕掛けも相手にすらされなかったのだろう。単にネズミだと侮るなかれといったところだろうか。

 

数日して、同じ場所で大きめの個体1匹を捕獲したのでケージに入れてみた。他の2匹は出てこない。それどころか、後で入れた個体はすぐに新聞紙の下に潜り込み、全く争わなかった。

 

大きい個体は掟破りをしていなかったことになるし、3匹とも旧知の仲だったことになる。その後も3匹は争うこともなく新聞の下でくっついて仲良くしていた (写真4)。

 

[写真4]
[写真4]

 

同じ場所で餌付けをした後に捕獲したのだから、餌場を共有する同じ集団の3匹と考えるしかない。最も小さい集団は家族集団なので、この3匹は家族だと勝手に推理する。

 

科学的に証明することが困難で公に認められていないことであっても、私にとっては推理をすること自体がとても重要なので、査読困難とどこかで声がしそうだが推理を続ける。

 

侵入者が服従の姿勢をとっているのに、先住者は一度の儀式では気がすまず、何度も繰り返しその行為を行った。これは、集団内でルールを守ろうとしない仲間を簡単に許してはならない、断じて許されない行為だと先住者が思っているからだと思った。

 

集団内にあるルールを守らないなんて、それでもお前はネズミか?と怒鳴っていたようにも感じる。

 

ルールを守ろうとしない仲間に対して中々興奮状態が収まらない先住者の様子を見て、厳しいルールに拘束されているクマネズミ社会の日常を覗き見た気がした。

 

 

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捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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