全世界で医療崩壊が相次いだ昨今、「命の線引き」という言葉も取り沙汰されるようになりました。ジレンマに苦悩する医療従事者も多く、医療現場では「医師のマネジメント」が重要になっています。そこで本記事では、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、解説していきます。

オペレーション効率を高める戦術「クリティカルパス」

オペレーション効率を高めるための戦術の最たるものがクリティカルパスです。1998年当時の国立熊本病院院長だった宮崎久義先生を中心に発足した「クリティカルパス研究会」が母体となり、1999年に設立された、「日本医療マネジメント学会」が、パスにとどまらず、さまざまな医療の課題をテーマに、職種間の垣根を越えて議論する熱い会になっています。

 

クリニカルパスは1999年当時の済生会熊本病院院長須古博信先生を中心に発足した「日本クリニカルパス学会」が普及を進めてきた呼称です。日本クリニカルパス学会学術集会は、医療マネジメント学会に比べてクリニカルパスに特化した学会です。このようにクリティカルパスをクリニカルパスと呼ぶことも多いようですが、語源からするとクリニカルパスは相応しくないと思います。クリティカルパスはもともと、工業界において生産性を上げるために開発されました。

 

各工程の順番や時間の経過をフローで示し、作業開始から終了までの時間的効率性を追求したもので、クリティカルパスと呼ばれています。まさにオペレーション効率を高めることが狙いです。米国のマサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルの看護師であったカレン・ザンダーが、夫がビジネススクールで学んできた手法を医療に導入したものです。

 

クリティカル(critical)とは「臨界の」「限界の」「ぎりぎりの」といった意味があり、作業工程で作業時間に影響を及ぼしている工程をいかに短時間で終わらせるかといった視点によるもので、工場労働者の生産性を向上させるための道具に過ぎないのです。

 

したがってクリティカルパスを用いることは、自らの仕事を工場労働者(ブルーカラー)と同様に位置づけているようなものです。

 

せっかく医学部で6年勉強して医師国家試験に合格した優秀な医師が、クリティカルパスにしばられた単純労働者となり、思考停止させているようなもので、クリティカルパスは医療を大量生産の工場労働にしてしまった罪があります。特に私の属する消化器内科領域は検査や処置の多い科で、クリティカルパスを用いることが多いのですが、偏差値の高い若手医師からすると消化器内科は単純労働作業のごとく見えてしまい、魅力のない診療科となっています。

 

ただし、病棟の看護師の業務負担や、入院病床の効率的運用といった観点からは有用ですし、患者の立場でも入院後のスケジュールが把握できるなどメリットも多いと思います。

 

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