職員の手助けをいっさい受けずに亡くなった
それから、1年後、Mさんは介護職員の手をいっさい煩わすことなく、ホームで眠るように亡くなりました。
89年の人生でした。女性職員が化粧をし、赤いドレスに着替えたMさんがベッドに横たわっています。最後の最後まで、ホームに、そして職員に対し、いっさいの手助けを受けずに亡くなった最期は、実に見事なものだったと思います。
実は、私は彼女から、次のようなことを言われたことがあります。
「私は病気が原因で『要介護2』の認定を受けているけど、自分のことは自分でできるの。だから、あなたは私のことは気にしないでいいのよ。そのかわり、困っている入居者がいて、あなたの手助けを必要としている人がいたら、必ず助けてあげてね。私にかまう時間でその人のことを面倒見てあげてほしいの」
彼女は介護保険制度のことを勉強したわけではありません。しかし、介護保険制度の相互扶助の精神を無意識の中で自覚し、実行できた高齢者ではないでしょうか? とかく、介護保険制度は使わなければ損、職員を自分のために働かさなければ損、という考えの人が多くいます。彼女は、そんな人たちに対し、「自分のことが自分でできる人は、人を当てにせずに自分でやりなさい」と言っているような気がします。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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